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市の福祉のために、公務員だからこそできること〜滋賀県栗東市・社会福祉の発展を志す〜

滋賀県栗東市の長寿福祉課に勤める吉川(よしかわ)さんに、専門職・住民との連携など、福祉の最前線での仕事とその面白みについてお話を伺いました。

ー入庁までのご経歴についてお聞かせください。

吉川:九州の福祉系大学で福祉を学び、社会福祉士の資格を取得しました。資格取得にあたって実習を行うのですが、興味のあるところに自らアポを取ってお願いする形だったんですね。大学卒業後は、実習先として選んだ滋賀県内の社会福祉協議会に就職し、3年ほど勤めました。

ー社会福祉協議会での仕事を通じて自治体への就職を選択した理由はなんだったのでしょうか?また、どんな仕事に携わっていましたか?

吉川:はじめに社会福祉協議会を選択したのは、まずは福祉現場がどんな感じなのかを見ておきたかったというのが理由です。具体的には、お金についてのお困りごとの相談業務、そして住民の方々と一緒に「住みよい地域をつくっていくにはどうしたら良いか」を考えていく活動がメインでした。

ー自治体への転職を決めたきっかけについてお聞かせください。

吉川:ステップアップとして「公務員になりたい」という思いは元々ありました。また、福祉は制度や事業がある程度できていないと形になりません。現場での経験を通して、結局は行政が担う部分が大きいと感じたんです。

行政であればさらに幅広いことができたり、一つのケースに長期的に関わることができる。その方がやりがいを感じられるのではないか、と考えました。

ー入庁後の遍歴や、具体的な仕事内容についてもお聞かせください。

吉川:入庁して社会福祉課に4年間、現在は長寿福祉課2年目です。社会福祉課では、生活保護のケースワーカーとしてご自宅への訪問、問合せや窓口での対応を行っていました。1日2〜3件という訪問づくしの日々でしたね。

生活保護という自立を目指す制度を基盤に、「世帯の自立にいかに貢献できるか」というところを一つの指標にして取り組んでいました。

ー現在お勤めの長寿福祉課でのお仕事についても詳しくお聞かせください。

吉川:長寿福祉課では、いわゆる事業に係る仕事をしています。まず、認知症に関する啓発活動ですね。市で委託している専門職の方々や認知症専門のボランティアさんと共に、認知症に関する講座を開催しています。

また、医師や作業療法士、看護師等専門職と連携した会議の進行も業務の一つです。認知症専門医を市の事務局が運営する認知症に特化した会議の場にお招きしています。個別のケースによってどう進めるのが良いかを専門的に話し合う場としています。

その他、前職でやっていたような地域づくりにも携わっています。業務の内容としては社会福祉協議会とほぼ同じですが、委託を受けて活動する側から委託する側に変わりました。活動一つひとつをどうするか考えることだけでなく、市全体で地域づくりを広げていく、風土をつくっていくことを目指してます。

幅広い仕事に携わっていますが、一番比重の大きいものは医師等専門職と進める会議ですね。かなり実務的な話になりますので、生活保護ケースワーカーの経験を引っ張り出して進行しています。専門職の方々と仕事をするのはやはり難しいですね。

ー入庁前にイメージされていた通りのお仕事ができていると感じますか?

吉川:イメージ通りです。もう少し長期的な視点であったり、幅広い視点で仕事をしていきたいという思いから転職活動をしていたので、当初イメージしていたところに近い形で仕事ができています。

とはいえ、行政職として入庁しているため、福祉と全く関係のない部署に配属される可能性もあります。私自身としても、福祉以外の部署も経験したいです。先ほどお話した通り、福祉は行政、そしてお金に係る部分が大きく、国が定めた制度や体制をそのまま市町に適用するというきまった形の業務が多いんですね。

しかし、他の部署では必ずしもそうではないのかなと思っていて。福祉の業務の感覚が当たり前になってしまうことは、行政職としてあまり良くないことだと考えています。今後はいろいろな部署を経験した上でまた福祉に戻り、その経験を活かしていきたいですね。

ー前職の社会福祉協議会と自治体では、どのような部分に違いを感じますか?

吉川:社会福祉協議会も、稟議書をまわした上で仕事をしていく形なので、事務的な部分は行政とほぼ変わりありません。ただ、協議会のときの方が、住民の方々との距離が近いですね。喋ったり、相談をしてくださることが多かったです。行政職のような仕事をしながらも、表に見せる顔は住民の方々により近かったと思います。

一方、市役所では公平である必要があります。地域づくりにしても、あまり市役所職員が前に出過ぎず、委託している協議会を通じて、住民の方々の立場を尊重し、「ご自身の暮らし」に立ち返っていただくことを大切にしています。市役所職員としての見せ方は難しいと感じますね。

ーこれは大変だったという仕事についてお聞かせください。

吉川:生活保護のケースワーカーを務めていたときは、さまざまな市民の方と接する中で「どうして市の職員がそんなふうに言われなければならないのか」ということもありました。

生活保護とは、あくまでも自立を目指す制度なので、ご本人にも努力をして頂く必要があります。そこで、ときには指導的立場でお伝えすることもあるんですね。そうなると、やはり市民の方の意思に反したことを言わないといけないときもあり、難しかったです。何のためにそれをしてもらう必要があるのか、理由を並べてしっかりと説明をさせてもらったり、対応する職員を変えたり、ご家族様の協力を得ながら対応していました。

ーでは、やりがいや面白みを感じた仕事についてもお聞かせください。

吉川:いろいろな課の人と繋がることができて、役所全体でアプローチができるところですね。たとえば生活保護に関しても、生活保護の法律しか知らなければ武器になるものはそれだけです。

でも、長寿福祉課や介護保険、障がい福祉系のサービスなどを知っていれば周りが助けてくれますし、その世帯に対して幅広いアプローチができる。そういった部分はやりがいを感じます。

ー残業やお休みなど、現在の働き方についてお聞かせください。

吉川:住民の方々と接する仕事のため、休日出勤はどうしても発生します。ですが、協議会のときよりも住民の方々との一定の距離が取れる位置にいますので、突発的な相談に対応するということも少なくなりました。また、ある程度こちらが計画した通りに業務が進むため、有給も取りやすいですね。働き方を自分でコントロールできるようになりました。

ー中途入庁ということで、職員同士の交流はどのような形で行われていたのでしょうか?また、職場の雰囲気についてもお聞かせください。

吉川:私が入庁した頃は新型コロナウイルスが流行し始めた時期だったため、交流の機会も少なかったんです。ですが、横の繋がりが広い同僚がおりましたので、飲み会などに誘っていただいたりしながら交流が広がっていきました。おかげさまで、中途入庁だからと言って苦労することは全くなかったですね。

ー最後に、この記事を読んでいる方に向けてお伝えしたいことはありますか?

吉川:今年1月に、認知症基本法が施行されました。認知症の人を含めた全ての人が共生できる社会の実現に向けた理念や方向性を示すもので、誰にでも起こりうる認知症という病気への理解、そしてみんなが相互に支え合っていこうという内容です。

この認知症基本法についての取り組みは、今後、多くの市町で注目されるようになると考えています。その足がかりとして、認知症に関する講座を開催しているところもありますので、ぜひ受講していただきたいですね。そして、福祉に携わることの面白みを感じていただければ、と思います。

ー本日はありがとうございました。

この記事は2024年7月29日にパブリックコネクトに掲載された記事です。

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