「Iターンを決めた鳥取県米子市で行政キャリアを積むという選択」〜営業職からの華麗な転身〜
民間企業の営業職で10年間の就業を経て、令和3年度に米子市へ入庁された松井さんに、現在対応している業務や、転職活動の様子、米子市の魅力についてお話を伺いました。
—はじめに、これまでの経歴を簡単にご紹介ください。
松井:大学卒業後、人材派遣会社やセールスプロモーション業務を行う民間企業に新卒で入社しました。福岡や東京、横浜などの各地を転々としていましたが、10年目に入る前に転職をしようと思い、米子市の採用試験を受けました。
入庁時は、福祉保健部の健康対策課に配属されました。2年後に異動となりまして、現在は米子市教育委員会のこども政策課に勤務しています。
ー行政へ転職しようと思った理由をお聞かせ下さい。
松井:前職の企業風土として、いずれ独立をするなどの選択もありました。ただ、結婚を経て、入社10年目を迎えるのを機に、今後のライフプランを考えていた所でした。
年齢的にも、これが最後のチャンスというわけでもないですし、とりあえずUIターン含め県外の企業も視野に入れ、転職をしようと思っていたところ、妻の出身地に近い米子市と縁がありました。
―なぜ米子市役所を選んだのでしょうか?
松井:まず、地方移住を推進しているアンテナショップに相談に行き、色々詳しく教えてもらった中の地域の一つに米子市がありました。米子市はIターン枠を用意していたのですが、Iターン枠を設けること自体が民間企業経験者などの人材を探している証拠だと思い、だったら私がここで頑張ってみようと思ったんです。
ー米子市の採用試験はいかがでしたか?
松井:米子市の採用試験では、教養試験を設けていなかったので、割とすんなり受けられたという印象はあります。ただ、面接をする上で、米子市の総合計画はかなり読み込みました。その総合計画に対して、私なりに課題と解決策について考えてから面接に臨みました。
ーでは、ここからは、米子市役所での業務についてお聞かせ下さい。入庁時はどのような業務をされていましたか?
松井:入庁してすぐは、福祉保健部の健康対策課に配属されました。ちょうどコロナ禍の時期でしたので、コロナに関する業務をメインに行っていました。
ー入庁当初はいかがでしたか?業務にすぐ慣れましたか?
松井:最初の3ヶ月は四苦八苦していました。ただ、上司や直属の先輩が色々教えてくれたり、さまざまな場所へ引っ張って行ってくれたりしたので、比較的早く仕事に慣れたと思います。
ー2年間福祉保健部の経験を経て、現在は教育委員会のこども政策課に異動されましたが、業務内容についてお聞かせ下さい。
松井:学校の統廃合における新しい学校設立のプロジェクトを担当しています。
ーどのような体制で新学校設立を進めているのでしょうか?
松井:義務教育学校(小学校と中学校の義務教育を一貫して行う学校)の準備を担当するチームがあり、全体では4名ほどで動いています。ただ、業務は多岐にわたるため、それぞれの専門知識を持つ課と連携しながら進めています。
ーそのなかで、松井さんはどのような業務をされているのでしょうか?
松井:関係課との調整や、それに伴う事務を中心に業務を行っています。また、学校を建てる敷地付近の住民の方と話して、水回りの整備や用地買収なども行っているところです。
ープロジェクトを進める上で、難しいと感じることはありますか?
松井:このプロジェクトは、引継ぎではなく、新たに始まった業務のため、指南書がありません。「義務教育学校を開校する」という大きな目標しかないので、どのようなスケジュールでどのように進めれば良いのか悩むところはあります。
ただ、悩んでいても仕方がないので、とりあえず、一つ一つ効果があるものを進めている状況です。
ー大規模なプロジェクトですが、イメージ通りの公務員の仕事でしたか?また、民間企業との違いは感じますか?
松井:全然違いました。公務員というと、窓口業務や定型業務というイメージがありましたが、こういった企画やプロジェクトの推進も市の仕事なんだな」という感想です。ただ、仕事に関していえば、そこまで民間企業とのギャップはないと思います。
民間企業も行政も組織目標があって、その目標を達成するために何ができるのか考えるという根底は同じだと感じます。民間企業の場合は最終的に「会社の利益」の追求になるかもしれませんが、行政は「住民のため」という目標の違いになるのではないでしょうか。
―米子市職員として働いてみてどのような印象がありますか?
松井:米子市の方は、ちゃんと考えてから、動いたり話したりする人が多いと感じます。民間企業の、特に営業職では、「考える前にまず体を動かせ」と言われたりもするんです。
ただ、米子市の方達は、住民の話やニーズをしっかり聞いて、それに対して良いサービスが提供できるように考えている印象があります。ただ発言しているのではなく、考えた上でしっかり中身のある発言をしているイメージですね。
ーでは、米子市で働くうえで、松井さん自身のやりがいはいかがでしょうか?
松井:自分が全く知らなかった新しい分野に挑戦しているので、純粋に面白いですし、新しい知識を得られる喜びもあります。
大変なこともありますが、2週間前は知らなかったことも、2週間後にはこうしたほうがいいな。などと考えることができるようになったので、自分自身の成長も感じています。
ー市役所勤務は異動が多いと思うのですが、キャリアを積んでいくことに関してはどのように考えていますか?
松井:前職の営業経験もそうですが、組織で通用する人材になるには、色々な経験や知見を持つことが大事だと思うんです。そういう意味では、異動が頻繁にあるということは逆にメリットになるのではないかと思います。
ー米子市役所での働き方はいかがでしょうか?また、Iターンということで知り合いがいないゼロからのスタートですが、コミュニケーションはとれていますか?
松井:休日はしっかり休めているので、働きやすい環境です。元々米子市に知り合いがいないので、職員から飲みやご飯に誘われれば行きますし、自分からも誘うなどして積極的にコミュニケーションを取るようにしています。
ー松井さんが思う、米子市の魅力について教えてください。
松井:今まで都会に住んでいて見ることのできなかった山や空を広く感じられるなど、自然豊かな所が魅力です。米子市は、私も妻も地元ではありませんが、地方に自分の故郷を持ちたいという想いを叶えてくれる場所だと感じています。
また、米子市には、明るくフレンドリーな人が多いです。地元へのプライドと愛着を持ちつつ、地域外の人に対しても優しく接してくれる印象があります。
ただ、深い付き合いはなく、ちょうど良い距離感で接してくれます。地方に行ったらプライベートもないくらいに垣根のないお付き合いをしなければいけないと思っていたので、その点はさっぱりしていて良かったです。
ーでは、最後に公務員を目指す方へアドバイスをお願いできますか?
松井:民間企業から行政へ転職する場合は、何か大きな出来事のように構えてしまう方もいるとは思うのですが、根底にあるのは行政も民間も同じです。行政だからキャリアが積めないということではなく、「行政というキャリア」もあると思うんです。
地域おこし協力隊などで、がっつりその地域の地域創生に携わるのももちろん良いのですが、行政に入る事自体が最後の決断ということでもないと思うので、もう少しフラットな気持ちで、公務員に挑戦しても良いのではないかなと思います。
ー本日はありがとうございました。