消防士として働く!イメージはできていますか?~女性消防士の活躍にも注目!やりがいあふれる「消防士」という仕事~
新潟県小千谷市消防本部で働く、星野さん、廣井さん、星さんの3名の消防士のインタビュー記事です。
所属する隊や日常の業務は3名それぞれ、それでもやはり「消防士」としてのやりがいは共通するものがあります。
消防士ならではの体力試験や消防学校のお話に加え、今回は女性消防士である星野さんに、女性ならではの視点で消防士として働く実態についても語っていただきました。
ーまずは自己紹介をお願いします。
星野:出身は魚沼市で、高校を卒業後、公務員専門学校の一年制コースに進学しました。平成31年に小千谷市消防本部に採用され、現在総務課庶務係に所属しています。
廣井:小千谷市出身で、市内の高校を卒業後、令和2年度に小千谷市消防本部に採用され、現在5年目になります。警防課警防係の所属で、主に救助隊として出動しています。
星:私も小千谷市出身で、市内の高校を卒業後、医療福祉系の大学で医療技術学部救急救命学科に進学しました。卒業後、小千谷市消防本部に採用され、現在3年目となります。主に救急救命士として救急隊で活動しています。
ー皆さんが消防士になろうと思ったきっかけを教えてください。
星野:私は小学生の頃に東日本大震災をテレビで見て、人命救助をする消防士の姿に感銘を受けました。その時から「私も人の命を救うような仕事がしたい」と強く思うようになり、消防士を志すようになりました。
廣井:私の出身地である小千谷市の東山地区は、中越地震の震源に近く、当時2歳だった私も被災しました。近隣地域には亡くなった方もいるなど、被害が大きかったこともあり、幼い頃から地震について学ぶ機会が多く、その中で消防士の姿を目にする機会も多かったです。
そのため、漠然とではありますが消防士は私の憧れの職業でした。中学校の職場体験で小千谷市消防本部に行き、実際に消防士の仕事に触れたことで、地元小千谷で消防士として働きたいという思いが強くなりました。高校時代もその思いを持ち続け、卒業と同時に採用試験を受けました。
星:高校3年生の頃、進路について考えていた時に「人の役に立つ仕事がしたい」と思うようになりました。ちょうどその年に、県内の大学に救急救命学科が開設されたことを知り、救急救命を学ぶために進学を決めました。
大学で救急救命について学ぶうちに、救急救命士の資格を活かせる職業として消防士の仕事に興味を持つようになりました。生まれ育った小千谷市で、救急医療に携わりながら地元に貢献したいという思いから、小千谷市消防本部を志望しました。
ー星野さんは魚沼市出身とのことでしたが、小千谷市を志望したのには何か理由があったのですか?
星野:祖父母の家が小千谷市にあり、実は私自身も小千谷市で生まれました。幼い頃から小千谷市によく遊びに来ていたので、とても馴染みのある場所でした。そういった縁もあり、小千谷市消防本部を受験しようと思いました。
ー採用試験について、どういった対策をしましたか?
星野:一次試験に体力試験があることは事前に知っていたので、専門学校で公務員試験対策をしていたのに加えて、個人的に体力トレーニングに励んでいました。
廣井:体力面では、高校時代から3年間部活動をしていたこともあり自信がありました。そのため、体力試験の特別な対策はしていませんでした。筆記試験対策としては、過去の問題集を解いたり、高校で案内された模擬試験を受けたりしていました。
星:私も大学4年間、部活動をしていたので、体力面での対策は特にしていませんでした。学力面に関しては、大学独自の公務員対策授業を受けていたほか、個人的に少し不安だったので、通信教育を利用して対策していました。
ー消防といえば体力試験というイメージですね。体力試験はどのような雰囲気でしたか?
廣井:体力試験は、周りの受験者もみんなライバルという感じだったので、とても緊張しました。周りはみんな強そうに見えたので、負けてたまるかと全力を尽くしました。
星野:私はどちらかと言うと楽しかったです(笑)元々一次試験は、体力勝負!と考えていたので、気合を入れて頑張りました。
ー現場に出る前には消防学校に入校しますよね?消防学校はいかがでしたか?
星野:消防学校では、県内各地から集まった同期と仲良くなれて、今でも繋がりが続いています。とても充実した半年間でした。
今振り返ってみても楽しかったですね。私の同期は女性が8人と多く、和気あいあいとした雰囲気で、毎日楽しく過ごせました。
訓練だけではなく座学もあり、大変なことも多かったのですが、一番大変だったのは時間管理ですね。次の授業や訓練準備のことを考えると、一時間の昼休みが思った以上に短く、急いで昼食を食べて準備をしなければなりませんでした。女性だからということもありますが、食事面では苦労しましたね。
廣井:消防学校でできた仲間とは、卒業後も交流が続いています。救助大会や専科などで頑張っている同期を見ると、自分も頑張ろうと思えます。学校生活だけにとどまらないようないい仲間と出会えたので、本当に良かったです。
ただ、私が入校したときはちょうどコロナ禍だったということもあり、真夏の炎天下の中マスクを付けながら訓練準備等をするのが大変でしたね。訓練開始前に体調を崩してしまう人が出るなど、消防学校本来の厳しさ以外の部分で大変だったという記憶があります。
星:消防学校では、訓練や寮生活を通して、とても貴重な経験をさせていただきました。同期とは今でも繋がりがあり、とても良い仲間ができたなと実感しています。
私も、やはり時間に追われる生活がすごく大変だったなという思いがあります。
また、新潟県消防学校では訓練の中で二時間走というものがありまして、いわゆる持久走ですね。これは一番辛かったなと思います(笑)
廣井:この二時間走は、消防学校内での体力賞とかにも関わるので、皆本気で上位を狙ってくるんです(笑)私は学生時代長距離をやっていたということもあって、もちろん本気で臨み、結果上位に入ることができました!
ー大変ではあったものの、皆さん本気で取り組んできた結果なのでいい思い出になっているのですね。続いては、今の業務内容について教えてください。
星野:総務課庶務係として、庁舎の維持管理や伝票処理などの事務仕事を行っています。出動面では、救急隊の機関員や、ポンプ車の隊員として出動しています。現在はポンプ車の機関員になることを一番の目標に、日々訓練に励んでいます。
廣井:私は救助隊として、交通事故現場での閉じ込めや、火災現場で取り残された方の救助などを行っています。状況によっては、救急隊や消防隊にも入るので、色々な業務を兼任しています。事務仕事としては、消防車両や資機材、消火栓や防火水槽、消防水利の管理などを担当しています。
星:私は救急隊の救急救命士として、気道確保や点滴、薬剤投与などの救命処置や病院への収容依頼を行っています。火災発生時には、消防隊として出動し、消火活動を行うこともあります。また、119番要請への対応や、統計資料の作成、資機材の整備、事務処理なども担当しています。
ーこれまでで印象に残っている業務や現場活動はありますか?
星野:火災現場で放水活動をしている時に、「ああ、私は消防士になったんだ」と実感することができますね。
また、救急現場でも、「女性の隊員さんがいて良かった」と傷病者やその家族から言っていただけると、女性消防士としてのやりがいを感じます。
廣井:交通事故現場で、重体の方を救助した後、その方の家族から「おかげさまで回復し、リハビリを頑張っています」という手紙をいただいた時は、消防士になって良かったと思いました。人の役に立つことができた、自分のやりたかったことが実現できた、と実感できた、忘れられない出来事ですね。
星:私が処置した50代の傷病者が社会復帰した時は、本当に嬉しくて、やりがいを感じました。その方は心筋梗塞で心肺停止状態だったのですが、私が行った点滴や薬剤投与、そして救急隊4人の活動により、社会復帰することができたんです。廣井さんと同様に、人助けが実現できた瞬間でもあり、私にとっては忘れられない思い出です。
ー小千谷市では、現在女性消防士は星野さん1人と伺っておりますが、女性として大変だと感じることや、あるいは女性ならではだと思うことはありますか?
星野:体力面では、やはり男性に敵わない部分もあるので、トレーニングを欠かさず体力をつけていかなければと日々思っています。一方で、救急現場で傷病者が女性だった場合など、女性ならではの対応ができる、または女性である私が対応することで安心感を与えることができるというのは、女性消防士の強みだと思います。
ー消防職員といえば当直勤務になるかと思いますが、女性が当直する環境等についてはいかがですか?
星野:私が採用された年に、女性専用の仮眠室が新設されました。とても綺麗で、セキュリティもしっかりしているので、安心して過ごすことができます。
トイレやシャワー室なども仮眠室内に完備されているので、女性も快適に当直勤務ができます。
今のところ、女性だからという理由で何か不便を感じるようなことはないですね。
ー実際に消防士になってみて、思い描いていたような消防士の仕事とちょっと違うなと思ったことはありますか?
星野:消防士といえば、毎日出動して訓練ばかりしているイメージでしたが、実際は事務仕事も多いです。
廣井:私も災害現場に出動するイメージが強かったのですが、事務作業は多いですね。小千谷市消防本部では、消防士は全員何らかの係に所属し、出動と事務作業の両方を行います。また、災害が起こる前の予防活動も重要で、訓練や施設点検なども大切な仕事となっています。
星:同じく事務作業や作成する書類が多いと感じますね。出動に関する報告書等はどれも大切なものなのですが、実際消防士になるまではこんなに書類が多いとは思っていませんでした。
ー小千谷市消防本部ならではの特徴はありますか?
廣井:小千谷市消防本部は小規模なので、様々な業務を経験することができます。数年ごとに係を異動するので、消防に関する幅広い知識や技術を身につけることができます。
星野:若い職員は2~3年で様々な係を経験します。私は3年目で通信指令係に配属になったのですが、現場経験も少なく専門的な係でもあったので、最初は不安が大きかったです。ただ、今となってみれば若いうちに専門的な係に配属され、3年間で多くの知識や技術を学ぶことができたので、とても貴重な経験を積ませてもらったと思っています。小千谷市消防本部の規模だからこそ、若いうちからそんな経験ができたのだと思います。
廣井:小千谷市ならではというわけではないのですが、実は男性の仮眠室も令和5年に新しい宿泊棟が建てられ、大部屋で仮眠していたものが個室の仮眠室となりました。
出動に備えて体をしっかりと休めるということもとても大切なので、個室で休めるという環境はとても魅力的に感じてもらえると思います。
ー職場の人間関係はどうですか?やはり上下関係などは厳しいですか?
星野:私も入るまでは、消防士というと筋肉ムキムキで怖い人が多いというイメージをもっていました(笑)
実際は皆さんとても優しく、面倒見が良い方ばかりです。訓練の時は厳しく指導していただくこともありますが、休憩時間や夜にはプライベートの話や趣味の話で盛り上がり、和気あいあいとした雰囲気です。
廣井:もちろん上下関係はありますが、何でも気軽に相談できる雰囲気です。災害現場では真剣に、時には厳しく意見を言い合えるような、良い関係性を築けていると思います。
星:私もメリハリのある職場環境だと思っています。厳しい先輩ももちろんいますが、面倒見の良い先輩も多く、気さくで話しやすい方ばかりです。仕事で分からないことや困ったことがあれば、上司が丁寧に教えてくれるので、安心して業務に取り組むことができます。
ーこれから消防士を目指す方に向けて、メッセージをお願いします。
星野:私は、専門学校時代に総務省消防庁主催の女性消防士の講話に参加したことで、より消防士に対する憧れが強くなりました。現役の女性消防士の話を聞き、活躍している姿や仕事のやりがいを知ることができたのはとても貴重な体験だったと思っています。
消防士になりたいという夢を持っている方は、是非そういったイベントに積極的に参加してみてください。最近は、SNSやYouTubeなどで女性消防士の活動動画などもたくさん公開されているので、そういった情報も活用して、消防士という職業をより深く知ってもらえたら嬉しいです。
廣井:私は高校卒業後すぐに消防士になりました。若くしていきなり消防士になるのは不安もあるかもしれませんが、早くから様々な経験を積むことができるのは大きなメリットです。大学で学ぶことも素晴らしいですが、消防士として早く現場に出ることで得られる経験もあります。採用試験に挑戦し、消防士として活躍する姿を想像してみてください。きっとやりがいを感じられるはずです。
星:私は大学卒業後に消防士になりました。社会人と学生では、生活スタイルも大きく異なります。学生時代は、学生にしかできないことを思いっきり楽しんでください。就職活動中は、壁にぶつかってしまうことも多々あるかと思いますが、諦めずに消防士を目指してほしいです。消防士として働いている自分を想像しながら、是非頑張ってください。
ー本日はどうもありがとうございました!