ふるさとを盛り上げるための社会教育〜鳥取県米子市役所 生涯学習課がやりたいこととやれること〜
民間企業に14年勤めた後、故郷である鳥取県米子市にUターンし、現在は米子市役所の教育委員会事務局生涯学習課に所属している新見(しんみ) 圭輔さんに、民間から公務員に転職したきっかけやUターンを決意した理由、そして現在のお仕事のやりがいについてお話を伺いました。
—はじめに、新見さんのこれまでの経歴を簡単にご紹介ください。
新見:出身は米子市です。大学卒業後、関西の自動車部品メーカーに就職し、主に購買部門で価格交渉や部品選定、新規仕入先の探索などの業務を担当するなど14年間勤めたのち、Uターンして現在は米子市役所につとめています。
—Uターンして公務員になろうとしたきっかけは?
新見:前職は、国内だけでなく海外への転勤の可能性があり、同期もすでに何人か海外に赴任していました。その中で子どもが生まれ、就学年が近くなってきた時に「一つの地域で子育てをしながら働きたい」と考えた結果、地元に戻るという選択肢を考え始めました。
公務員を選んだ理由は、いつかは地元で「地域に貢献したい」という想いがあり、行政の仕事であれば、直接的にも間接的にも、色々な分野で地域のために仕事ができると思ったからです。
—公務員試験の勉強はどのようにされていましたか?
新見:実は前職をやめるタイミングで仕事が忙しくなってしまい、あまり勉強に時間を費やせなかったんですね。筆記試験はSPIだったので、その傾向など基本的なことは頭に入れて試験に臨みました。
面接試験に向けては、米子市のまちづくりビジョンや事業計画はひととおり読み、米子市がどういう課題を抱えていて、どのような街を目指しているかというのは把握して臨みました。
—現在の所属とお仕事内容についてご紹介ください。
新見:現在は教育委員会事務局の生涯学習課に所属しています。職務内容は一言で言うと「社会教育の振興」です。私の主な担当業務は3つありまして、市立図書館の管理、二十歳を祝う会の担当、そして社会教育委員の会の事務局を担当しています。
サブ担当の業務では、公立の小中学校に導入しているコミュニティ・スクール事業を学校教育課と連携して行っています。
コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)とは、学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる「地域とともにある学校」への転換を図るための仕組みです。学校運営に地域の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくことができます。米子市では令和3年度から順次導入し、令和6年4月には市内全小中学校に導入が完了しました。
—現在の働き方についてはいかがでしょうか?
新見:残業は前職に比べてかなり減りました。子どもがまだ乳幼児なので、急な体調不良での迎えが発生しますが、同僚にもサポートしてもらいながら働けています。
土日は基本的に休みで、たまに講座やイベントがあるのでそこは代休を取っています。有給休暇も取得しやすいです。
通勤も家から職場が近いので、家に帰る時間も早く、子どもと接する時間も長く取れるようになりました。
—生涯学習課の体制を教えて下さい。
新見:生涯学習課は、課長職を含め4名在籍しています。年齢層は30代から50代。また、公民館との連携も重要なので、市長部局の地域振興課も兼務する形となっています。
—現在3つほど事業を担当されているとのことですが、それぞれの業務のスケジュールや年間の流れについて詳しくお願いします。
新見:まず市立図書館の管理業務は毎月購入したものの処理・確認業務が定型業務としてあります。あとは、年度初めや契約更新のタイミングでの入札や契約の締結を行っています。
二十歳を祝う会は毎年1月3日に開催しますので、6月ごろから広報を始めて、実行委員の募集をし、そこから冬に向けて準備を進めていきます。
社会教育の方は、県主催の会議や研修会、市で主催する講座、西部地区の市町村で連携して開催する事業もあり、年間通して業務がありますが、県や中四国地方の大会といったものが秋に開催されるので、夏から秋にかけてが一番忙しいでしょうか。
—社会人経験があるとはいえ、1年目からさまざまな業務の担当をされていくことは大変でしたか?
新見:そうですね。昨年少し大変だったのは、二十歳を祝う会の実行委員が一昨年のは集まらなかったので今回は必ず集めようということで、チラシやポスターの配布、ラジオでの呼びかけの他、知人を通じての声かけなどいろいろな手段でなんとか5名の応募があり、実行委員会を結成することができました。
その後の本番に向けた準備でも、1000人規模のイベントということもあって、当初思っていた以上の作業や準備物の量があり苦労しましたが、周りのみなさんの協力もあり、なんとか乗り越えることができました。
—二十歳を祝う会の他に、市民との関わりや連携などを行う場面はありましたか?
新見:図書館の業務は基本的に司書さんたちがされるので、普段私が図書館で直接市民の方と関わる機会はないのですが、図書館協議会という審議会ではさまざまな市民の声を踏まえた意見をいただき、その声をもとに、よりよい図書館にしていくための検討をしています。
—民間と行政での働き方の違いや、入庁前と後とでギャップに感じたことは?
新見:民間と行政で大きく違うなと感じたのは、契約や入札、支払いなど色々な手続きがかなり定型化されているなと。また、行政の手続きは常に法律や条例に従って進めていくので、そこは民間とは結構違います。
逆に変わらないなと思ったのは、まず相手の話をよく聴いて信頼関係を構築し、対等な立場でお話をすることの大切さです。前職では価格交渉や納期交渉など、相手からすれば嫌な話をしないといけないのですが、これも信頼関係があれば前向きに対応してもらえると実感していました。行政の仕事でも、まず相手の話をよく聴いて、相談内容を正確に把握し、信頼してもらうことがスタートかなと思います。
—市役所で働いていて、やりがいや面白みを感じたことがあればお聞かせください。
新見:二十歳を祝う会で実行委員の子たちと企画から準備、当日の運営まで大きなトラブルもなく本番を終えられたことと、実行委員の子たちが「楽しかった」「いい経験ができた」「米子市が好きだということを再認識した」という声を伝えてくれたことです。これは二十歳を祝う会を実行委員会形式で開催する目的そのものなので、特に楽しく関わってもらうということは大切にしていきたいと思っています。
—今後米子市として、あるいは新見さん個人として取り組んでいきたい課題や今後の展望などはありますか?
新見:米子市内の各地域で、社会教育を基盤とした「人づくり・つながりづくり・地域づくり」の好循環を目指していくために、いろいろ面からアプローチをしていく必要があります。その一つの手段として、仕事内容の中でも触れたコミュニティ・スクールの仕組みを使って学校や地域の課題解決に取り組むことを通して、地域の人々のつながりを広げていくことがあります。
少しずつでも関わってもらえる人を増やしながら、無理なく続けられる取組となるよう配慮しながら輪を広げていくことが大事だと思っています。
私個人としては、社会教育行政を主導する立場である、社会教育主事になるための講習を昨年受講し、経験を積んでいるところです。
また、令和2年度からは社会教育士という制度が始まっており、社会教育主事で学ぶスキルを地域づくりのために活かしてもらうため、民間やNPOなどで活躍している方にも社会教育主事講習を受けてもらえるよう門戸を広げているので、この制度のことも周知し、仲間を増やしつつ、自分の勉強も続けていこうと考えています。
—もともとお子様の就学をきっかけに米子市にUターンされたとのことですが、実際に米子市にUターンしてみての生活はいかがですか?
新見:市街地に住んでいるので、買い物で不便はないですし、海も山も近く自然豊かで、子育ての環境としても単身で暮らす場合でも、「住んで楽しいまち」だなと改めて感じています。
高校卒業後は外の世界を知りたいという気持ちがあり、実際に大学進学を機に米子を離れましたが、いろいろなまちで生活する経験をしたことで米子の魅力を再発見できたこともあり、若い人々に米子の魅力を伝えていく役割も果たしていきたいです。
—最後に、社会人経験を積んだ後に新しい環境として公務員の道を選ぼうと思っている方にメッセージをお願いします。
新見:市役所の仕事というと一見堅そうなイメージを抱くと思うのですが、様々な交流の機会や部署の異動を通して多くの人と繋がりを持つことができます。業務で困ったときにも同僚の方の人脈をきっかけに他部署の方にアドバイスをいただけるようなつながりもあります。
米子市役所は社会人経験者採用で働いている職員も多いですし、受け入れる側の体制も整っているので入ってすぐに溶け込める職場だと思います。ぜひ選択肢のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
—本日はありがとうございました。