新規事業、小児発達専門医による診断や治療が平戸市内で受けられるように〜保健師として病院との交渉に尽力〜
平成15年度に長崎県平戸市役所入庁後、現在はこども未来課で参事兼⺟⼦保健班⻑として働く藤井雅⼦(ふじいまさこ)さんに、入庁のきっかけやこれまでのお仕事内容、職場環境についてお話を伺いました。
—はじめに、これまでの経歴を簡単にご紹介ください。
藤井:熊本県で生まれ育って、看護学校を卒業するまで熊本県で過ごしました。その後、長崎県の保健師養成専門学校に1年間通って、保健師の免許を取得した後、長崎県の吾妻町(現・雲仙市)役場に保健師として就職しました。
吾妻町役場には9年間勤務したのですが、結婚を機に退職して夫の地元である長崎県平戸市に引越ししました。生月町(現・平戸市)役場に、半年ほど臨時職員として勤務した後、一般事務正規職員として入庁しました。そこでは児童福祉関係の事務などを担当していました。
その2年半後の平成17年10月に、生月町が平戸市・田平町・大島村と合併したタイミングで、任用替えをして保健師の仕事をするようになりました。一般事務で働き続けるか、保健師として働くかを考える機会をもらったことで、もう1度保健師として働きたいと思うようになりました。
—保健師としての異動歴を教えてください。
藤井:合併当初は、保健センターで老人保健や精神保健の事業を担当していました。その次に、同じセンター内の地域包括支援センターに課内異動になりました。その後は、保健センターと長寿介護課を行ったり来たりして、3年前の令和4年に現在所属しているこども未来課に異動になりました。
現在、平戸市役所の保健師は、こども未来課、健康ほけん課、長寿介護課に分かれて13名在籍しています。
—こども未来課ではどのような仕事をされているのでしょうか?
藤井:私は、こども未来課の母子保健班に所属していて、妊娠期から子育て期における支援を担当しています。私の主な担当事業は、こどもの発達を支援するための小児発達専門外来の窓口や発達専門相談事業になります。
保護者の相談に応じ、こどもの発育発達の状況を確認して、専門職である心理士や作業療法士、言語聴覚士の相談につなげたり、発達専門医の受診につなげたり、といった役割を担っています。また、生活面や学習面についてこどもや保護者が抱えている不安を解消するように関係機関と連携するなどのサポートもしています。
業務分担については、各保健師には担当事業の他に担当地区を割り振り、その地区に住む妊産婦と子育て家庭を各保健師が担当しています。私自身も担当地区をもっていますので、家庭訪問や相談対応をしつつ、各種事業の運営管理や年間計画の作成等を行っています。
ちなみに、今年度に開始した新規事業である小児発達専門外来の業務は、今年中に事業全体の流れや体制をしっかりと作っていく必要があるので、業務全体に占めるウェイトとしては大きいです。
—発達外来に関する新規事業について、取組むこととなったきっかけや事業内容を教えてください。
藤井:こどもの発達の状態を発達専門の先生に診てもらいたいと感じている保護者は以前から多いのですが、診断や治療ができる発達専門医がいる病院が平戸市にはありませんでした。そのため、診断を受けるためには、市外の病院に出向く必要があるのですが、予約からの待機期間が4か月程かかり、すぐには受診できないという状況が慢性的に続いていました。
そんな状況を解消するために、発達専門医が在籍する市外の病院と交渉をして、年に4回だけではありますが、市民病院の外来で診察をしていただけることになり、これによって、市内で診断を受けることができるようになりました。
発達専門外来を開設していただいた市民病院にも、何度も足を運んで交渉や調整を重ねました。
こうして開設した発達専門外来は年4回の開設とし受診希望児の予約を受け付けて、診察時間は新患で90分、再診で30分を予定し、そのスケジュールの調整をしています。この際には、事前に面談や問診票の記入により受診希望児の状態を把握して、診察前に必要な発達検査を済ませておくなどの調整もしています。
—保健師の教育体制について教えてください。
藤井:保健師としてのスキルアップについては、長崎県が策定している「保健師人材育成ガイドライン」を参考にして独自に取り組んでいます。
新人保健師には若手の先輩が指導役となります。1年目で到達しておきたい「専門職として求められる能力」について目標を設定し、それを1年間かけて、どのような方法でどのように身に付けるか、OJTの年間計画を指導役と2人で作成しています。
たとえば、「子育てをしている家庭の課題を知ることができる」という目標があって、それを実現するために、「子育て家庭を訪問する」とか「乳児健診で面談する」といった実践計画を立てます。
その後、その年間計画を班で共有して必要な助言やサポートをしています。また、月に1回開催している、全保健師が参加して事業その他について協議検討する場である保健事業連絡会においても共有をして、助言を仰いでいます。
この計画については、年度途中の中間評価と年度末の最終評価として、まずは自己評価をしてもらいます。それを班内の保健師で共有して必要な助言をした後、先にあげた保健事業連絡会でさらに必要な助言をしています。二重三重で手厚くサポートしているイメージです。このような支援を、入職2年目も行っています。
人材育成の一環としては、入職して1~2年目だけでなく全保健師が、「キャリアレベルにおいて求められる能力チェックシート」を用いて毎年自己評価を行っています。その評価結果を共有することによって、保健師全体としての課題をみつけることができます。多くの人に共通して不足しているスキルが浮き彫りにもなるのです。
—年数を経ると、すべての評価項目がどんどん向上していくイメージでしょうか?
藤井:評価項目については、役職に応じてキャリアレベルが変わり、求められる能力も変わってきます。たとえば、管理職であれば、政策策定・評価のための能力や危機管理能力、人事管理という、管理職としての役割を果たせているか、という項目が加わってきます。
—15年前の入庁時と比較して、教育体制は変わってきましたか?
藤井:入庁当時はまだ人材育成ガイドラインがありませんでしたが、現在は全ての保健師が人材育成について考える機会があります。また、保健師のメンバーには、課長職が1名、参事職が1名、係長職が3名おります。保健師が在籍する各課に保健師の係長が配置されていることにより、後輩の相談や指導が非常にしやすい環境になったと思います。
—職場の雰囲気を教えてください。
藤井:こども未来課母子保健班は、事務職1名を除く全員が作業療法士、栄養士、助産師などの専門職なのですが、人間関係はおおむね良好で話しやすい雰囲気です。勤務時間中はどちらかというと大人しい雰囲気ですが、班で食事会をする時はとても賑やかになります。市役所の中でも課によって雰囲気がだいぶ違っていて、たとえば、他課は笑い声がよく聞かれます。
—残業や休暇の取得状況を教えてください。
藤井:こども未来課母子保健班は、健診や相談会の予定が年間計画で決まっていて、健診に従事した日は日中に作業ができないので、残って事務をすることがあります。このため、他の課と比べて残業は少し多めです。
昨年度は、退職などの関係で人員不足の状態であったため、結構忙しかったですが、今年度は、定数通りの職員配置になり、残業時間も減少しています。
休暇については、忙しい中ですが、業務の状況をみながらも個人の希望に応じて取得できています。こどもの病気などの急な用件の際も、お互いに調整しながら助け合い、休暇が取れるようにしています。
—平戸市の生活はいかがでしょうか?
藤井:もともと農村地帯の出身なので、海や山や緑などの自然が多いところは肌に合っていると思っています。市役所の近くに住んでいますので、普段の生活では不便さを感じることもありません。
買い物をするときに市外に出ないといけないこともありますが、出かけることが好きなので全く苦ではないです。
—本日はありがとうございました