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島の中で健康に過ごすための保健指導〜長崎県五島市にUターン!奈留島唯一の保健師〜

大学卒業後、7年間看護師として従事した後に令和3年度から長崎県五島市の保健師として入庁した清⽔ 恵理さんに、転職のきっかけや五島市での過ごし方、お仕事内容についてお話を伺いました。

—はじめに、これまでの経歴を簡単にご紹介ください。

清水:現在は五島列島の福江島にある五島市役所の奈留⽀所で保健師をしています。私自身もともと福江島出身で、高校生まで暮らしていました。

島の中には大学等の高校卒業後の教育機関がなかったため、島を出て大学に進学し、卒業後福岡で看護師として7年勤め、その後地元の福江島に戻り、令和3年度より保健師として勤務しています。

—福岡の方で看護師として働かれていたとのことですが、五島市に戻って保健師になろうと思ったきっかけは何でしたか?

清水:転職を考えた当時、ちょうどコロナが蔓延している頃で、病院の中での業務が非常に忙しかったんですね。

不要不急の外出が制限されたこともあって、自由に地元に戻れない時期があり、万が一家族に何かあったときにすぐに島に帰れないのは嫌だなと思っていました。

そんなときに五島での保健師求人を知りました。看護師から保健師になること自体は、大学の頃にカリキュラムを受けて資格も取得していましたが、実質未経験の仕事ということでほんの少し不安でした。

ただ、応募から勉強、試験までが結構バタバタで、自分の性格的にも「なんとかなるでしょ」という気持ちもあり(笑)。勢いで応募したというのが正直なところです。

また、残業や緊急の対応、夜勤が多い看護師よりも、ある程度の勤務時間が決まっていて比較的ゆとりのある保健師の方が向いているのではないか?と思った部分もあります。

また、五島市自体が最近はネット環境が良くなったり街自体も発展していたりと、都心で暮らすのとそこまで差がなくなってきていたので、これを機に五島市に帰って仕事をするのも良いのかなと思ったのもあります。

—現在のお仕事内容や、勤務されている環境について教えてください。

清水:五島市役所の保健師は、現在私を含め14名在籍しています。保健師は基本的に班に配属され、例えば健康づくり班やこども未来課で働く子育て関連の班、高齢の方を担当する長寿介護課の班などがあります。

入庁後は五島市役所の本庁の健康づくり班で2年ほどがん検診を担当しました。業務内容としましては、毎月病院や集団で検診を受けた方のデータ処理を行ったり、精密検査に行っていない方に対して電話や訪問で勧奨をしたり。ほかにも、禁煙勧奨や、訪問、母子検診などの現場も経験しています。

そこから令和5年度に五島の中の真ん中に位置する奈留島の支所に異動し、現在は窓口班として、窓口対応を行っています。

私とケアマネージャーさん以外の皆さんは、税金や住民票などを担当される事務職の方ですね。私は介護や健康面の相談に来られた方の応対や、検診などに関する質問などにお答えするという仕事をしています。

奈留支所の人数は全体で20〜25名程度で、私の所属する窓口班と地域振興班で構成されています。

—前職では看護師として従事されていましたが、保健師と看護師の仕事のギャップなどは何か感じましたか?

清水:最初は今までと全く違う仕事なので、戸惑いはありました。例えば看護師をしていた当時は電子カルテしか触っていなかったので、Excelの使い方や使ったことがないソフトなども使うので、慣れるのに少し時間がかかりました。

あとは、看護師は基本的に病院に来る、入院患者さんやそのご家族と接する機会はあったのですが、保健師になってからは自分から島の人たちの元に訪問に行くことが多くなりました。

どのように接すれば良いかとか、勧奨のときにどのようにお話をしていけばその後の検査や検診につながるのかを、気にするようになりましたね。

—課や係の教育の体制についてはいかがでしたか? また、異動の際の引き継ぎなどはどのようにされましたか?

清水:入庁してからはがっつり「この人が私の教育担当です!」というわけではなかったのですが、上司にあたる係長が「何かあれば私に訊いてほしい」ということで、その時々で気にかけていただいていました。

他の自治体でもそうだと思うのですが、保健師が不足している状況で入庁しているので、どうしても忙しい雰囲気はあったのですが、そんな中でもわからないことがあればいつでも優しく教えてもらっていたので、非常に助かりました。

奈留支所の引き継ぎは、私が奈留に行くのかなとなんとなく思っていた状態で、前任の方に早めに引き継ぎをしていただきました。支所の保健師ということで、今までより業務の量自体は減るけど携わる業務の幅は増えるような形ですね。

正直不安はありましたが、せっかく保健師になったからには出来ることを増やしたかったので、母子の検診にメインとして入らせてもらうなど、勉強をしながら少しずつ出来ることを増やしていきました。

—本庁での働き方と、支所での働き方の違いはありますか?

清水:本庁では基本的に事務仕事が多かったので、自分が担当している地区に訪問へ行くというのはありましたが、なかなか自分から出かける回数は少なかったかなと思っていて。

それに比べると、支所は住民の方が「何かあったら支所に行こう」と頼ってくださって、奈留の中でも保健師は自分しかいない状況なので、そういう意味では本庁にいた時よりも密接に関わる機会は増えたのかなと感じます。

—奈留支所の他の事務の方々との協力や交流はどのようにされていますか?

清水:最初は事務の方々でも誰がどのような仕事をしているのかを把握出来ていなくて、逆に事務の方々も私がどんな仕事を受け持っているのかというのを知らなくて。保健師の仕事自体も個人情報を扱うような仕事ですので、気軽に話せるものではなかったんですね。

でも一緒に働くうちにどのような仕事内容をどなたが担当していて、支所内がどのようにまわっているかというのを把握できるようになり、他の職員の方も「この仕事は保健師さんの仕事ね」と頼っていただけるようになりました。

他には健康関連の訪問に行く際などに「この手続きのやり方がわからない!」という住民の方がいれば、私の車に担当の方を乗せて一緒に行くこともあります。なかなか窓口に来られないような高齢の方もいるのでね。そういった橋渡しなどもしています。

—現在は実家のある福江島と奈留島を行き来されているのでしょうか? また、暮らしの面ではいかがですか?

清水:そうですね。週末は実家に帰るようにしているのですが、同時に本庁の子ども未来課の母子検診の助っ人に入ったり、保健師の定例会などがあるので、週に2、3回福江島に行きます。船でだいたい3、40分でしょうか。

暮らしの面では、福江島の方は先ほども少しお話したとおり福岡に住んでいた時とあまり変わりはないかなと感じます。

大きなショッピングモールのようなお店はありませんが、スーパーやドラッグストアはありますし、ネット環境も整っていて通販で頼む際も結構早く到着するので、不便さは感じないですね。

移住者の方も増えているので、たとえば自然の中で子育てをしてみたいという方にとっては良い環境ではないかなと思います。

—最後に、五島市で保健師として働くうえでのやりがいや今後の目標はありますか?

清水:看護師の場合は、患者さんの退院という明確なゴールがあるのですが、保健師の場合はそういった明確なゴールがなく、どちらかというと予防や検診といったことがメインのお仕事になるんですね。なのでやりがいというと少し難しい話にはなってくるんですけど。

とは言え、支所に相談しに来てくださる方が「保健師さんがいてくれてよかったよ〜」とか、訪問に行った先の方が「不安だったけど頼れる人がいてよかった」と言ってくださるので、最近は「これがやりがいか!」と思えるようになりました。

そして、島民の方の健康面で言えば福江も奈留も車社会で、あまり徒歩で移動する機会がないんですね。野菜不足や塩分の摂りすぎなども気になるところです。特に、高血圧の方が多いことが、五島市の大きな課題です。医療や介護の面も人手不足なので、だからこそ私たち保健師の方で島の中で健康に過ごせるようにしていただくための工夫をしていけたらと思っています。

—本日はありがとうございました。

この記事は2024年5月19日にパブリックコネクトに掲載された記事です。

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