家族の為に、ずっと同じ場所で働くという魅力~金融機関からの転職を経て思うこと~
高知県香南市で働く三谷さんのインタビュー記事です。
三谷さんは金融機関での勤務経験がありますが、家族のこと、将来のことを考えて転職を決められたそうです。
転職したことで何が変わったのか、そして何をやりがいに感じているのかをお話しいただきました。転職を考えている方はもちろんのこと、就職先で悩んでいる方にとってはとても参考になる内容となっています。
ーまずは簡単に経歴等の紹介をお願いします。
三谷:香南市の出身ですが、高校は高知市に、そして大学は東京の大学に進学しました。大学では法学部を専攻し、主に六法と言われるもののほか、法学だけではなく一般的な教養についても幅広く学んでいました。
大学卒業後は、地元の金融機関に就職したのですが、配属が徳島県となり、徳島の支店に4年間勤務していました。その後、令和2年7月に香南市役所に入庁しました。
ー以前は金融機関に勤めていたのですね。転職するにあたっては、何かきっかけがあったのでしょうか?
三谷:結婚したことをきっかけに、転職を意識し始めました。地元高知の金融機関でしたが、当時の勤務地は徳島県で、いずれは大阪や東京へ転勤する可能性もありました。家族と将来のことを考えると、子どもが産まれたら成長を近くで見ていたいなと思い、転勤がないところで安定的に働きたいと思いました。前職の3年目くらいに結婚したので、そのあたりから転職は考えていましたね。
ー転職を考える上で大事にしていたことはありますか?
三谷:今お話ししたとおり、転勤がないという点も重要でしたが、家族もいたので将来安定して働ける職種が良いと思っていました。地元では民間企業の選択肢が少なかったため、公務員が候補になり、公務員の中でも、地元の香南市役所を選びました。
働きながらの転職活動だったということもあり、併願はせず香南市役所しか受験しませんでした。
落ちてしまっても、前職を続けながらまたチャレンジすればいいかなと思っていたため、もし受かったら行きたい、という思いで受験していました。
ー働きながらの転職活動は大変そうですよね?今振り返ってみると転職活動はいかがでしたか?
三谷:日中は仕事をして、夜または休みの日に勉強をしていました。自分だけではどういった勉強をしていいのかわからなかったので、通信教育の教材も活用していました。
今振り返ってもものすごく大変だったという印象ではないのですが、仕事が終わってから2時間くらい勉強する、という生活を3か月くらい続けていましたね。
ー市役所に転職してみて、前職と働き方などで違いを感じることはありますか?
三谷:何より休みがとりやすいと感じましたね。私が採用された初日に、直属の上司が休んでいたので、少々驚きましたね(笑)前職では休暇制度は整っておりましたが、市役所では急な用事で休みをとる必要がある際は、時間単位で休暇を取得できる環境がありますのでとても良いなと思います。
また、前職では限られた時間でせかせか働いているというイメージでした。主に外回りをしていたのですが、帰社時間はおおよそ決められている中で、たくさんの会社を訪問しなければならなかったため、スケジュールどおりにいかないことが多々ありました。今は自分でスケジューリングして仕事の調整ができているので、前職の時と比べて余裕があるといいますか、少なくとも常に追われているような感覚はなくなりましたね。
一方、紙文化に関してはやはり違和感がありました。とりあえず資料は印刷して読んでみようという文化が根強く、デジタル化は民間に比べて進んでいないと感じました。前職はデジタル署名が取り入れられるなど、電子化が進みつつありましたので、一気にアナログに戻ってしまったような感覚でしたね。
ーこれまでの業務内容と、現在のお仕事について教えてください。
三谷:入庁後最初に配属された農林水産課では、主に農業者への補助金業務を担当していました。地域で農地等の保全を行っている組織に対して、交付金を支払う業務や、農地を貸したい人と借りたい人の契約を結ぶ業務をしていました。
その後、高知県庁の市町村振興課に出向となりました。1年目は財政班に所属し、公営企業(病院や上下水道局等)に係る地方債関係の仕事や、デジ田交付金(※)の担当をしていました。市町村が国に申請する計画に対して、どのようなものであれば申請対象になるかといった相談受付などを行っていました。
2年目は行政班に所属し、地方自治法に関する問合わせ対応や、広域行政に関する業務をしていました。いずれも国と市町村のパイプ役のようなイメージですね。
現在は企画財政課(財政係)で、地方債の担当をしています。市が行う普通建設事業と言われるハード面の事業等に対して、地方債を適切に充当していくような仕事です。県に出向していた際と扱う対象事業は異なるものの、地方債に関する流れなどはよく似ているので、出向の経験が活かせています。
※「デジタル田園都市国家構想交付金」の略称。日本政府が推進している構想で、デジタル技術を活用して地方の魅力を高め、地方と都市の差を縮めることを目指すことに対する交付金のこと。
ー市役所で働くやりがいや魅力を教えてください。
三谷:今の部署では直接住民と関わる機会は少ないですが、前の農林水産課やその他の部署では、住民との距離がすごく近いと感じました。補助金を交付した際に感謝されるなど、お礼の言葉を言われたときは嬉しかったですね。前職の金融機関でも感謝されるような場面はもちろんありましたが、市職員であれば住民全員がお客さんなので、幅広く地域の方の支えとなっていることがやりがいに感じます。
また、自分で物事を考え、進めることができるのは公務員ならではだと思っています。
既存事業の効率化を考えることもあります。例えば、農林水産課で契約書を書いてもらう際、窓口まで用紙を取りに来て、持って帰って家で書いて持ってくるという流れだったのですが、HPに載せれば取りに来る手間が省けるのでは?と提案し、HPに載せることになったこともあります。
ちょっとしたことかもしれませんが、市民目線で考え提案したことが採用され、それにより少しでも市民の利便性向上につながるというのは嬉しいですね。
木育事業についても自分なりに考えて取り組みました。保育園や幼稚園、小学校、中学校に直接伺い、木育について伝える機会があるのですが、どうやったら森林保全の必要性について子どもたちにわかってもらえるのかを自分なりに考えました。
結果、実際の森の写真をラミネートして見せたりして、ちゃんと手入れをしないと災害が起こるんだよ、ということを自分の言葉で子どもたちに伝えました。
市の事業やその必要性を自分なりに考え、わかりやすく伝えるというのは市役所ならではの仕事だと思います。
ー前職で培った知識経験は、現在活かすことができていますか?
三谷:スケジュールを考え、組むという能力は、前職で当時の上司から学んだので、公務員になってからも活かすことができていますね。これは公務員だからというわけではなく、社会人として共通して使える能力だと思っています。
また、財務諸表、貸借対照表、損益計算書などを読む機会がとても多かったため、現在の所属では活かせることがあります。数字の動きを読めたり、大きな数値の桁なんかも一目でわかったりします。
一方で、農林水産課に配属された際には、これまでとは全く畑違いの農業に関する知識や土地の貸し借りに対する知識が必要だったためゼロから勉強をしました。これは今後異動があればどこでも同じことかもしれませんね。
ー香南市で暮らす魅力を教えてください。
三谷:海と山に挟まれていて、自然が豊かなところが良いですね。動物園や海水浴場「ヤ・シィパーク」があったり、ミカン狩りができたりと、自然を満喫することができます。
特に県外の人から見たら、自然の豊かさを感じてもらえると思います。空港へも車で市の中心部から10分程度で行けてしまうので、アクセスが良いのも魅力です。
夏に開催される「みなこい港まつり」の様子。行事を楽しめるのもその地域ならではの楽しみです。
ー働く環境として、香南市役所の特徴はどんなところですか?
三谷:香南市は平成18年に5つの市町村が合併した市なのですが、旧自治体の隔たり等を感じることもなく、仲の良い職場だと思います。規模が大きすぎる自治体だと、他部署に立ち入りにくいことがあるかもしれませんが、香南市役所は物理的にも課の間に壁がないこともあり、気軽に相談に行くこともできます。
人としても相談しやすい人が多く、とても働きやすい環境だと思います。
ー最後に、求職者に向けてメッセージをお願いします!
三谷:実際に転職を考えるのは勇気がいることですし、仕事をしながら転職活動をするのは大変だと思います。ただ、自分が決めたことに対してしっかりと進んでいけば結果は必ず付いてくるので、折れずに頑張ってほしいですね。
私自身、振り返ってみてもワークライフバランスを考えると、転職して良かったと思っています。前職のままでは、転勤や単身赴任により家族と会える時間が制限されてしまっていたかもしれませんが、今は子どもを含め、同じ家でずっと過ごすことができています。
同じ場所で、転勤を気にすることなく働くことができる環境はとても良いと思います!
ー本日はどうもありがとうございました。