子育て世代から広がる地域の輪〜4年連続転入超過!新潟県出雲崎町の新たな挑戦〜
新潟県出雲崎町は、4年連続転入超過と、特に子育て世代を中心に移住者が増えている自治体です。そんな出雲崎町で、地域政策室に所属し移住支援や空き家バンク対応などに取り組む小林 純さんと、子育て支援政策を行うこども未来室 室長の金泉 修一さんにお話を伺いました。
—これまでの経歴や、現在のご担当について簡単にご紹介ください。
小林:入庁したのは平成16年です。最初は教育委員会にいましたが、その年に大雨災害が起こり、農業関係の部署へ異動したのをきっかけに、双方の部署を行ったり来たりしていました。
その後、保健福祉課に5年間在籍したあと、現在は、総務課の地域政策室企画係に在籍しています。総務課へ異動し5年ほどですが、移住促進、地域おこし協力隊や空き家再生事業、ふるさと納税や地域DXなど、地域創生に関する幅広い業務を行っています。
金泉:こども未来室の室長を担当しています。平成4年に入庁しているので、かれこれ30数年です。入庁時は保健福祉課に採用となり、その後広報、介護保険、観光、会計、総務などを担当しました。
一番長いのは十数年在籍した総務課です。総務課の地域政策室では小林と数年間一緒に業務を行い、空き家対策、公共交通や財政などを担当していました。
その後、全く畑違いの子育て分野である、保健福祉課のこども未来室担当になった次第です。2018年に「多世代交流館 きらり」という施設が建ち、2021年よりこの「きらり」でこども未来室長として職務に就いています。
ーこども未来室が行っている子育て支援制度について教えてください。
金泉:出雲崎町は生まれる前から高校卒業まで、成長期にあわせたトータル子育て支援を提供しています。特に経済的支援においては、0歳〜18歳まで出雲崎町で育てると、約270万円分の子育て支援が受けられます。また、きめ細かい相談支援事業も充実し、ハード・ソフト両面から子育て世代を支える体制を整えているのが特徴です。
例えば、生まれる前で不妊や不育症治療費の助成、妊娠・出産で合計50万円のコウノトリ祝い金、0歳から2歳児の保育園無償化、小・中学校の入学祝い金、高校生まで医療費無償、高校生通学費30%助成、就職で出雲崎に帰ってきたら就職支援金と、子育て時期の切れ目のない支援策があります。
ー非常に充実した制度ですよね。
金泉:はい、2015年頃から徐々に支援制度を充実させてきました。出雲崎町自体が持続可能なまちづくりを行うために、子育てをする世代を積極的に呼び込むことが重要です。町長も「小さい町の大きな挑戦」と言っており、町としても子育て支援は重点施策の1つです。
さらにいえば、経済的な面ばかりではなく、その他のサポートも充実させることで、さらに安心して子育てができる環境を整えていくことも目指しています。
ーどのようにサポートしているのですか?
金泉:サポートの中心となるのが「多世代交流館きらり」です。こども未来室の職員、私の他に事務職員、保健師、保育士、助産師、事務補助の、合計6人が常駐し働いています。子育て専門の知識を持つ職員がいることで、きめ細かく、それぞれのご家族の子育て期にあったサポートをしています。
もちろん、保健師など専門職員が母子家庭を支援する体制は他の自治体にもあります。ただ、「きらり」は名称の通り多世代の方々、町外の方も含めて多くの方が平日休日関係なく訪れるので、自然発生的に交流が生まれています。子育てを終えた世代の方々からの知見、町外での取り組みなどいろんな情報交換がされて、親同士の繋がりも生まれます。
親子の遊びを通じて自然と交流が生まれ、そこに集い、その場に専門職が寄り添うことで、きっちりした悩み相談室ではなく、気軽に子育てのお悩みを打ち明けられるような雰囲気を意識しています。
ーありがとうございます。では、次に小林さんに移住定住支援についてもお聞かせいただけますか?
小林:出雲崎町の移住支援は、先程金泉が話した子育て支援と、住宅支援という2つの柱があります。
住宅支援ですと、若い夫婦や子育て世帯が入居できて子供の数に応じて家賃を減額する「ひまわりハウス」と呼ばれる賃貸の町営住宅など、さまざまな支援を行っています。
ひまわりハウスは、家賃は4万5千円ほどですが、子供1人あたり月1万円の家賃を減免するので、2人いれば家賃が2万5千円と比較的安い価格で住めます。
さらに団地の造成も何年も前から行っておりますので、まずはひまわりハウスに移住して住みはじめて、その後団地を買って定住するということも多く事例があります。
比較的若い世代も多いので、団地特有のしがらみというか、強すぎるつながりもない点も、良いと言ってもらえていますね。
ー出雲崎町は4年連続転入超過で転入が超過されているんですよね。
小林:はい、年代別での転入者割合を見ると、10歳以下のお子さん、30代40代の親世代が増えているので、住宅、子育ての支援施策が評価いただいているのだとおもいます。
ーその中で、空き家バンクの対応なども行われているんですよね。
小林:はい、こちらも空き家自体の登録も年々増えてきており、令和5年度(10月現在)だと契約件数も10件ございました。ただ、こちらは子育て世代ではなく、50代60代の夫婦でかつ出雲崎に全く地縁がない方々といった、全く違う層からのニーズですね。移住自体の相談を受けるのはむしろこちらの方が多いほどです。
実は住宅支援では、住宅を購入した方に最大120万円を支給するという補助制度もあります。こちらは年齢要件もなく、その点が好評頂いていますね。
ー全方位的に、色々な支援ができているんですね。それは出雲崎町役場全体でも連携しながら進めているのですか?
小林:そうですね。出雲崎町の職員は70人ほどしかいないので、全員顔と名前が一致しています。このため、改まって相談しに行くというより、どの方にもフレンドリーに政策について話せる環境です。課を超えて話を進めることもハードルは低いです。
金泉:私は普段、庁舎とは建物が違う「多世代交流館きらり」にいますが、離れた場所でも情報を共有しやすい環境です。定住移住政策であれば企画係、小中学校の支援なら教育課など、すべての課が連携しているんです。
よく聞くような、縦割り組織といったものではなく、出雲崎町全体で地域のために連携しているかたちですね。
ーこれだけ充実した施策や設備は、発信もされているのですか?
金泉:未来へつなぐ子育て応援宣言を契機に、出雲崎町の子育て支援を積極的に情報発信しています。「いずもさきLIFE」という子育てガイドブックを作成したり、出雲崎町で子育てをしている家族の子育て支援PR動画も作成しました。
PR動画はこちら!:https://public-connect.jp/employer/67/blog/list?type=2
あとは、出雲崎の観光施設に、子育て応援宣言のまちという大きな看板を立てて、そこにQRコードを貼り付けました。読み込むと、出雲崎町の子育て支援サイトが見られるというかたちです。観光客の方にも出雲崎の子育て施策や制度を見ていただきたいんですね。
また、プロモーションの予算をつけ、近隣地域を走るバスに広告もだしました。SNS連動で町のグッズを差し上げるPR施策も行いましたね。
ーすごい!非常に幅広く施策を進められているんですね。実際に効果はありましたか?
金泉:「SNSを見てきらりに来ました!」という新規のお客さんがものすごく増えました。その方が他の方にお知らせして、また新しいお客さんが来てくださるという良い循環になっています。
ーそれだけの施策はどのように企画し実行しているのですか?
金泉:実際に親世代の方々からのニーズを直接聞いて、施策を考えています。きらりで実際に親世代と接している保健師さんや保育士さん、助産師さんも自由に意見を出し合い、お父さんお母さんは何を望んでいるのか、どうやって情報を得ているのかなどから出雲崎町に合う施策を皆で考えているんです。
それがたとえ即効性がなかったとしても、結果として「あの制度ができて助かりました」「またきらりを利用します」などと言ってもらえると、やっぱり本当に嬉しいし、やりがいを感じるんですね。
小林:出雲崎町では職員がやりたいことっていうのが形にしやすいのかな、と。十数年働いていますが、上司に対しても話しやすい環境で、きちんと説明すれば事業を企画、実施することができます。
ーでは、今後さらに行っていきたい施策や計画はございますか?
小林:まずは定住ではなく出雲崎町を知ってもらいたい、観光でも良いので出雲崎に来てもらって、何かを体験をして、出雲崎のものを買ってもらうというような関係人口を増やす取り組みをやっていきたいと考えています。
そこから、もちろん移住するなら家が必要なので、今ある空き家と繋げよりマッチングしていく仕組みも作っていきたいです。
金泉:今まで児童遊園が町内に分散していたんですけど、少子高齢化で管理が難しくなってきたので、児童遊園の集約化を図ろうとしています。
そのために、「きらり」のすぐ隣の小高い山の地形を利用して、ちょっとした屋外施設を建設しています。今の世代のパパママから意見を聞いて進めているので、出雲崎オリジナルの公園、憩いの場といった存在になればいいですね。
さらに、産後ケアなど、寄り添い型の支援や、子育てと就労が両立できる環境をつくる就労支援についても検討をしているところです。
ーさらに今後も進めていくのですね!本日はありがとうございました。