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村外のスーパーへ仕入れ商品の交渉まで行う!?〜村民の健康を支えるためなら何でもする岐阜県白川村の保健師、管理栄養士~

電力会社から岐阜県白川村役場に保健師として転職した髙島 綾子(たかしま あやこ)さまと、白川村役場に管理栄養士として入庁2年目の奥野 真夕(おくの まゆ)さまに、お話を伺いました。

—自己紹介やこれまでのご経歴を簡単にお願いします。

髙島:電力会社で、産業保健師として務めていました。退職前は約200名~250名の社員さんたちの健康管理を担当していました。

奥野:私は、元々出身が白川村と同じ飛騨地域だったんです。しかしながら、「白川村で職員を募集している」と知るまでは、白川村に来たこともありませんでした。地元に近いところで仕事をしたいという想いがあり、令和4年に新卒で白川村役場に入庁しました。

—白川村役場への入庁や、現在の仕事を決めたきっかけはなんだったのでしょうか。

髙島:実は保健師の資格を取ったあと、一度この白川村役場に入庁したんです。その後結婚し、富山県内の市町村保健師として再就職、10年間勤務しました。その後、坊守業や美容の自営業をしながら子育て中心の生活後、また保健師をしたいと思い、産業保健師を経て、行政へ戻りました。

コロナ禍において保健師がゼロとなる危機もあり、白川村長・副村長から直々に熱い勧誘をいただいたんですね。産業保健師の仕事も楽しくなってきた頃だったのですが、これからは村へ貢献しようと令和4年に白川村役場に戻るという選択をしました。

奥野:私は、新潟の大学に通っていたときの学外実習がきっかけですね。新潟の村で働く管理栄養士さんの話を聞く機会がありました。

そのときに印象的だったのが、管理栄養士と村民との距離の近さ。管理栄養士として村民に近いところで働き、信頼される姿を拝見して、「自分も同じように、住民との距離が近い場所で働きたい」と思ったことが、白川村で管理栄養士として働くきっかけのひとつとなりました。

—髙島さんは、前職とのギャップを感じる部分はあったのでしょうか?

髙島:健康管理にまつわる法律や健診項目は、住民と働く人とでは全く異なります。また、働き方も大きく変わりました。たとえば、産業で問題となっているメンタルヘルス管理では、産業医や精神科医と協働して対応することもあります。

役場の村民課となると、赤ちゃんからお年寄りまでを担当します。がん検診や住民健診、妊婦健診に乳幼児健診、予防接種。さらには、入院されていた方が白川村に戻ってくるとなったときに必要な介護サービスの調整など、仕事内容は多岐にわたります。そういった対応を、白川村に1つの医療機関の医師・看護師と連携して行っています。

白川村は、岐阜県内で最も人口の少ない村ですが、それでも保健師が私1人の体制で約1,500人の村民を対応するのはやはり大変ですね。

—現在の職場の労働環境はどのようになっていますか?また、おふたりはどういった形で庁内連携をとっているのでしょうか。

髙島:原則8時半に始業、17:15に終業で、18時台には帰るようにしています。また、基本的には休日出勤はありませんが、月に1回程、自主研究会など学習する機会に参加しています。

日々の仕事に関しては、保健師である私と、管理栄養士である奥野さんとで一緒に取り組んでいます。通常は、チームの中で業務分掌という形で仕事を割り振りますが、割り振りが困難なほど仕事内容が多岐にわたっているのが現状です。

ですが、お互いに自分の範疇内の仕事だけではないということは了承したうえで仕事をしています。そのため、すべての保健・衛生部門の仕事を、資格上の特性や状況に応じて相談しながらこなしていますね。このような仕事の仕方は、ほかの自治体ではあまりないかもしれません。

たとえば、精神医療に関する危機介入や虐待対応、検査や医療が必要なケースは私が調整担当。メタボリックシンドロームに関する保健指導をはじめとする食や栄養がメインとなるケースは奥野さんが担当する、といった形です。そのほか、調査報告ものや法律に基づく書類作成や補助金といった事務作業全般は、2人で対応しています。

—白川村役場ならではの仕事の面白さについて教えてください。

髙島:白川村での仕事の醍醐味は、すぐに対策を講じられるところだと思います。課長も「問題に気づいたらすぐに動け」というスタンスなので、思うように動くことができる。もしも失敗しても修正すれば良い、という感じで、ほかの市町村に比べてスピード感があります。

また、乳幼児の離乳食、あるいは高齢者の誤嚥・肺炎を防止する食形態の相談など、食の問題は村民の皆様の健康の重要な位置を占めています。岐阜県全体の課題として、管理栄養士不在の自治体が多いという点が挙げられる中、白川村に管理栄養士がいるというのは大きな強みなのではないでしょうか。

奥野:住民に対する食環境の整備という漠然とした業務イメージはありましたが、民間企業の方と直接話をして仕事を進めていくことは新鮮でしたし、やりがいを感じました。

髙島:前副村長さんからは「(若手の)奥野さんがここでの仕事を継続し、やりがいを持って取り組んでいけるかどうかは髙島の手腕だ」と言われました。職種こそ異なりますが、白川村での仕事の面白さを教えていけ、と。

私自身としては、お金以外に得られるものが大きいということがモチベーションにつながるのではないか、と考えています。そしてそれは、生きがいや仕事の楽しみなのではないでしょうか。仕事を続けていくということも勿論ですが、大規模組織の保健師、管理栄養士ではできない白川村だからこその仕事をしていきたいですね。

—おふたりのアイデアから進めている仕事もあるのでしょうか?

髙島:白川村は、買い物をするために岐阜県高山市、富山県砺波市といった市街地へ高速道路を使って行かなければならないような土地です。週3回の移動販売車もありますが、どうしても食の選択肢は限られます。

健康指導をしようとしても、村民の皆様は手に入るものや摂取するものが限られている。村民への食支援を行い、食の選択力をつけてもらうためには、環境整備からはじめていかなければならないと感じました。そこで行ったのが、農協さんや村外のスーパーの店長さんへの直接交渉です。健康維持に役立つ食材や商品を取り揃えてほしいとお願いをしに行きました。

ーそこまですることがあるんですか!?

髙島:はい。高山市のスーパーから来られる移動販売車のスタッフと協議し、村民がよく購入されるお惣菜や菓子パンなどを聞いて、減塩調味料の配置も依頼しました。また診療所の医師から減塩調味料が農協でも購入できることを患者さんに話してもらえるようにし、野菜の栄養価ランキング表などをPOPにし、特設コーナーを作ってもらいました。

健康教育においては、家庭菜園でのおすすめ野菜を苗や種の情報からお伝えしたり、子どもたちには「野菜を買う、作る」というところから伝えていくことが重要だと思っています。

その取り組みの一環として、奥野さんには小中一貫教育の義務教育学校である白川郷学園で「一人暮らしするようになった時、食事や食材をどう選ぶか」という授業を卒業前の9年生(中学3年生)にしてもらったこともあります。保健師・管理栄養士の観点から、食育をどのように教育に組み込んでいくのか、というところが今後の課題です。

—今後はどんな方に入ってきてほしいですか?また、どのような教育体制をとっているのでしょうか?

髙島:そのつど、困っていることが表出できる環境を整えたいなと思っているので、自分のビジョンや考えをしっかりと話せる人が良いですね。白川村での仕事は業務範囲が広く、生活環境もガラッと変わるので、入庁後はつまずくこともあるかもしれません。

それでも、コミュニケーションを取りながらチームに足りないところや無駄なところを話し合い、同じミスをせずにより良く仕事をしていくためにはどうしたら良いのか?という意見を出し合っていける場をつくっていきたいです。

また、経験に応じて仕事の割り振りを決めながら教育をしていければ、と考えています。自分たちでやれる範囲のことは、どんどんできるのが白川村役場の良いところ。新しい職員の方とともに、チームの弱いところを柔軟に強化していければ良いですね。

—これから白川村に入っていただく方のために、インターンも実施する予定だそうですね。詳細について教えてください。

髙島:インターンでは、学生さんを対象とした保健師の就業体験を実施します。1泊2日の行程で、保健師としての働き方のみならず、白川村の良さや生活の不便さなども含めて知っていただく機会になると思います。

また、白川村役場は、村外から就業されている方が非常に多いのが特徴です。なので、興味を持ってくださった方の安心材料に少しでもなれば……という思いから、インターンのチラシには職員の写真とともに出身地も記載しています。村外からのインターン参加も大歓迎です!

そこから、もしも白川村役場での仕事に興味を持っていただけるのであれば、就業を希望する方と職員とで忌憚のない話をする場を設けたいですね。実際に働いたり生活してみると、大変なことはきっとあるはずです。そういったことも乗り越えられるような楽しさや自分自身にフィットするものを、お互いに知ることができると良いのではないでしょうか。

—最後に、白川村の良さはどんなところでしょうか?

髙島:車の運転が必須であったり、雪が多かったりと、生活をするうえでの不便さを感じることはあります。ですが、大きな災害が少なく、とても暮らしやすいところが白川村の大きな魅力ですね。人口は少ないながら、若い住民の流入が多いのも白川村の特徴です。

奥野:白川村は高速のインターチェンジがあるので、富山や石川といった他県に出かけるときも、意外にもアクセスが良いんです。また、伝統行事をはじめとする村民同士の交流の場がとても多いところは、白川村ならではのあたたかさだと思っています。仕事でもプライベートでも、村民の方々との交流は大切にしていきたいです。

—本日はありがとうございました。

この記事は2023年8月9日にパブリックコネクトに掲載された記事です。

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