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週1日は自分の夢を叶えるための時間に〜山形県金山町での地域おこし協力隊の働き方〜

山形県金山町役場の総合政策課で課長補佐として、地域おこし協力隊の募集について担当されている髙橋 章さんに、今後の募集についてお話を伺いました。

—金山町での地域おこし協力隊の状況をお聞かせください。

髙橋:金山町では、これまで地域おこし協力隊の採用は9人です。農業系を中心に採用をしておりました。現在は、観光担当で育児休暇を取られている方、そしてイワナやヤマメの養殖業を行っている方の2名が所属しています。

そしてこれからはさらに増員していく予定で、違ったポジションで新たに3人を募集する予定です。

—今回の募集では、どんなポジションの人を求めていくのですか?

髙橋:1人目は、関係人口を広げるために観光の産業化を目指す、観光担当です。育児休業に入った隊員の仕事を引き継いでいただきます。金山町としては、観光にもっともっと力を入れたいのですが、PR活動など今その分野で動けていない金山町の課題を解決してくれる方を募集します。

2人目は、金山町にある「グリーンバレー神室」というホテルとレストラン、スキー場、温泉やキャンプ場が一体となった交流施設を盛り上げてくれる方を募集します。この施設は現在経営再建中ですが、人材が足りないため、企画や営業などエリア一帯の魅力化を進めたいので何でもやっていただける方を求めています。

3人目は、農林業関連の人材です。今、農林業体験を繋げる「おてつたび(人手を必要とする農家や旅館などの地域現場と、働きながら旅をしたい旅行者をつなぐ人材マッチングサービス)」の需要が伸びており、町内でも町の特産品である落花生「ビーナッツ」などを生産されている2社の受入れ先があります。

しかし、その需要に対して町内での受け入れ態勢が確立できていません。受入れ先と体験者のコーディネートをしたり、そこでの関係人口を広げたりするポジションを必要としています。

また、空き家を活用した体験者の宿泊場所の確保や、移住相談、空き家調査活動も行っていただき、これらの活動が3年以内の起業のきっかけに繋がればいいなと考えています。

ちなみに、観光担当は産業課など、募集したポジションはそれぞれ関連する業務の課へ所属となり、すべて総合政策課の所属になるとは限りません。

—では、1つ1つお聞きします。まずは観光業務に関してより具体的に教えて下さい

髙橋:現在育児休業中の前任者が、交流人口や関係人口を広げるためのイベントをこれまで開催してきました。そこで県外から金山町に多くの方が来ていただいていたのですが、リピートで来てもらう施策は十分に実施できていません。

だからこそ、復帰してくる前任者とともに働き、ノウハウも引き継いで発展させ、観光産業を盛り上げていただきたいです。

—どのようなイベントを開催されていたのでしょうか?

髙橋:例えば、「カネヤマノジカンデザインスクール」というイベントは、今年度15名程参加いただきました。まず東京都内で勉強会を開いて、その後は金山町に1週間ほど滞在して町内のイベントに参加、最後は金山町の良さをSNSで発信していただくという構成の企画です。

このイベントは3年続いているのですが、参加者は毎年違う方が来るので、そこで終了となってしまいます。中には個人的に金山町に来てくださる方もおりますが、3年間で繋がった他の方々にも改めて繋がっていきたいと考えました。

現在その計画は止まっているので、以前ご参加いただいた方々にまた金山町に興味を持っていただき、移住まで繋がればいいなと思っています。

—では「グリーンバレー神室」振興についても詳しく教えてください。

髙橋:グリーンバレー神室は、金山町とJRが出資し、金山町長が社長を務める第3セクターが運営しています。ほぼ町営で、広報力についてはまだまだ弱いと感じています。だからこそ、そこに長けている方に魅力を発信していただきたいと考えています。

グリーンバレー神室は、周辺にも前述した地域おこし協力隊が川魚の養殖を行っているお店や、牧場など色々と観光資源はあります。その場所だけが賑やかになるのではなく、地域全体にある施設を周遊できるように、金山町の滞在時間を長くする工夫や仕掛け、イベントの企画などをしていただけるとさらに良いですね。

例えば旅行会社との協力体制構築も作りたい、パンフレット作成や配布もしたい、SNSも運用したいとか、やりたいけど人手が足りずできていないことはいくらでもあります。できることから、どんどんフットワークを軽く行っていただきたいですね。そして、今も頑張っている地域の方々とも連携し巻き込んでいけることが理想です。

あと、お金の心配はさせません。きちんとした考えや熱意があれば、それに応じて町の予算をつけて動いていただくことも可能です。

とはいえ、働き方や仕事の進め方は、応募する方の考え方、目指すものにリンクさせる形で良いです。任期は3年ありますし、最初は地域を知るために自由に動いていただき、そこから興味が湧いたり、「自分だったらここの部分が得意だぞ」という分野に、2年目から注力していただくというようなスモールスタートから始めて大丈夫です。

—農業・おてつたびのコーディネーターについて教えてください。

髙橋:今までの農業体験は、民泊で家に泊めて農業のお手伝いをしてもらう企画が主流でしたが、難易度が高く、食事の準備や泊まりの準備までも含めるなど、やはり大変ですよね。

そこで、ヨーロッパの手法に倣って業務を分散し、泊まる場所をコーディネートする人と食事を提供する人とを分けて実施することにしています。このうち、受け入れをコーディネートする役割で1名募集します。

金山町の農家は高齢の方が多く、ネットでの予約受入れやLINEでの対応のサポートをしてくれる人を求めています。また、泊まる場所への予約を繋ぐ役割として事業化したり、来訪した県外の方を観光担当者と連携して関係人口で繋いだり、街の案内役としてもご活躍いただきたいですね。

この事業は、近隣市にゲストハウスを運営しており業務も手伝って頂ける方が一人おり、その場で教えてもらえる環境もあります。色々とノウハウの吸収も可能です。

未経験でも、予約の手続きができるパソコンやスマートフォンを使いこなせていれば大丈夫です。後々は、空き時間で空き家調査や空き家の紹介などもできるようになっていただく予定です。

—今回の募集から、地域おこし協力隊の募集や働き方を変えたとお聞きしました。具体的にどのような点を変えたのですか?

髙橋:一つは、働き方・ミッションをガチガチに固めないということです。週1日は自分の将来のために自由に使って良い日を設ける働き方にします。例えば将来の起業のための準備など、何をやっていただいても良いと考えています。

もう一つは、事前にお試し期間を設けて、金山町での農業体験や観光案内役などの体験活動も受け入れるようにします。数日なり1週間なり体験してもらって、合わなければ、そこで縁がなかったということでも構いません。

実際に体験してみてから正式に応募に申し込むことができるようにします。また、地域おこし協力隊OB・OGから話を聞く機会も設けたいと思っています。そこから正式な応募を考えていただければいいかなと思います。

実は、農業系の地域おこし協力隊で定着率が課題になっていた部分もありました。地域おこし協力隊は良いイメージだけが先行してしまいますが、実際には雪に覆われての冬の大変さ、また重労働など理解し乗り越えなくてはいけない課題もあります。そういった現実も理解していただき、金山町がどういった町なのかを少しでも把握した上で、是非応募をしていただきたいと考えております。

また、住居はこちらで用意させていただきます。公営住宅ですが、家賃は1.5万円から2万円と格安ですよ。

—どういった方に来てもらいたいですか?

髙橋:田舎は車社会ですので、自動車免許をお持ちの方がいいですね。車自体は、活動費の中からリースもできます。

あとは、コミュニケーション能力に長けていなくても、明るく元気な方であれば大丈夫です。地域の方々がいろいろウェルカムで、何とかしてくれるという文化です。コミュニケーション面でつまづくことももちろんあるかもしれませんが、人と関わるのが好きな方に来ていただきたいですね。

—今回の募集について、髙橋さんの思いを聞かせてください。

髙橋:地域おこし協力隊というのは、風の人だと思っています。「風土」という言葉がありますが、地元の人が「土」ならば、外から来る地域おこし協力隊は「風」の人で、その方が定着してくれれば「風土」ができるのかな、と思います。金山町にはいま新しい風が必要だと感じています。

今回の募集は3種類ありますが、働き方についてはいろいろなパターンを用意して、来た方との相談で、その方が目指すものにリンクする働き方にしたいと考えています。

また、一定のミッションは当然ありますが、前述のとおり週5日のうち1日は、その方が起業するためにとか、3年後の自分のために活動する自由な1日を与えるという募集の仕方を考えております。やらされる仕事や決まりきった仕事だけではなく、1日は自分の未来、将来のために使っていただきたいですね。

ー本日はありがとうございました。

この記事は2023年12月7日にパブリックコネクトに掲載された記事です。
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