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新潟ブランド「コシヒカリ」を支える仕事!~行政にしかできない尊い業務~(令和6年10月3日)

新潟県庁で農業技術職として働く朝妻さんのインタビュー記事です。中々普段接する機会の少ない農業技術職の業務内容やその魅力についてお聞きしました。「県」という規模だからできることや、その業務の大切さがとてもよくわかる内容となっています。

ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。

朝妻:生まれも育ちも新潟市ですが、大学進学を機に栃木県で一人暮らしをしていました。大学は理工学部だったのですが、4年次に学校間交流のような形で別の大学に所属し卒論を書いていました。ちなみに農業のことはここで初めて研究をしました。新潟県出身で実家も農家だったということもあり、そのまま大学院に進学し、院修了後は附属農場で職員として働いていました。

その後、新潟県庁で農業技術職の募集があったため応募したところ、社会人経験者枠で採用していただくこととなりました。

農業技術職は聞きなれない職種かもしれませんが、主に農業に関する現場の技術的サポートなどに携わっています。

ー実家も農家だったとのことですが、小さいころから家業を継ぐことや農業の道も考えていたのでしょうか?

朝妻:家の仕事の手伝いなどはしていましたが、正直なところ家を継ぐとか、実家以外で農業関係の道にすすもうという考えは持っていなかったですね。

ー前職も農業関係のようですが、なぜ転職しようと考えたのでしょうか?

朝妻:いつかは実家の農業をやらなければという思いがある中、子どもが生まれ、私生活が変化したことが大きなきっかけでした。妻も新潟の人間だったため、栃木の職場では互いの両親に頼ることも中々できず、地元新潟で子育てをした方が子どもの為にもなると思い、新潟県への転職を考えました。

農業関係の仕事には魅力を感じていたので、新潟に戻るとしても他職種に転職するようなつもりはなく、市町村等も含め農業職で探していたところ、新潟県で社会人枠の農業技術職の募集があり、応募をしました。

ー農業技術職とは、どのような業務に携わるのでしょうか?

朝妻:現在は上越地域振興局農林振興部普及課という部署に配属されているのですが、ここでは主に農家さんに対する農作物の栽培指導を行っています。私は特に稲の栽培指導を担当しています。

県庁職員としての栽培指導となるため、県が定める農業行政の施策に沿った活動が主となります。

県庁の職員というと、デスクワークをイメージするかもしれませんが、夏季は朝だけ事務所に出勤し、それ以降はずっと外に出ているような日も多々あります。

農家さんのところに伺ったり、農協さんと指導会をするなど、地域農業の維持・発展に少しでも貢献できるよう日々取り組んでいます。

ただ、これはあくまで生産現場で普及員として業務する場合の話です。

以前は県庁で勤務していたこともあるのですが、その際は農業総務課の配属となり事務仕事がメインでした。農協法に基づいた団体指導という役割で、農協を検査・指導するようなセクションでした。しかも、検査・指導といっても農業に関することではなく、金融や共済を含む、農協の経営や業務全体に関するものでしたので、農業技術職からは全く想像できないような業務でしたね(笑)

その後、県庁の別の課も経験しましたが、基本的には行政内部の業務となるため外に出るようなことはほぼなく、各種事業の執行や推進など、事務的な仕事が中心でした。

「県農業施策の執行と推進」という大きな目的は変わる訳ではありませんが、同じ農業技術職であったとしても、県庁で働くか、振興局のような出先機関で働くかでその業務内容は大きく異なってきます。

ーこれまでの経験の中で、「こんな成果があった」ということがあれば教えていただけますか?

朝妻:中々成果が目に見えにくい業務ではあるのですが、毎年現場指導をしている中で自分の業務の大切さを実感することがあります。

新潟県には皆さんご存じのとおり各地域に「コシヒカリ」や「新之助」というブランド米がありますが、その新潟米ブランドの根幹であり、最も重要な生産資材である種もみの生産は、県の指定する「種子場」と称する限られた地域で行われ、病気や他品種の混入を防ぐなど、県管理基準を厳守した生産が徹底されています。私たちは、生産に係る現地指導や、製品の審査等を通じて、種子場生産者、関係機関・団体の皆様と一丸となって、良質な新潟米生産の一助となるべく日々取組んでいます。

毎年何事もなく契約数量の種もみを出荷できること、良質な種子が新潟米の生産現場で「当たり前」に流通することが一番の成果ではないかと思っています。

「当たり前が成果なの?」と思われますよね(笑)

種もみは品質管理はもちろんのこと、天候の影響も受けやすいので予定通り毎年出荷をするのは実はとても大変なことなんですが、毎年あることが当たり前なので、予定通り出荷できたからといって褒められるようなことはありません。当たり前を支える、典型的な行政の仕事ですね。

種もみの生産は、品質を管理するために非常にコストがかかるため、民間企業では、ここまでのコストをかけて安価に種もみ生産を行うことは不可能です。特にお米などの主要作物生産にとって、基幹的な生産資材である種子は生産者が使用する量も多く、出来上がった生産物価格に配慮した、安定的な価格設定が必要です。だからこそ、行政が中心となり、高品質な種もみを適正価格で農家に供給することは、新潟米を維持・発展させる上でもとても重要だと思っています。

新潟県内には約12万haの水田があるのですが、その水田面積へ種もみを供給する種子場の面積は700ha程度です。

この700haが、県内12万haを支えているんです。関係者の方々を含め、ここまで支えてくれて本当に尊い仕事ですよね。種子場の維持・発展も、今後の県の重要な役割であると考えています。

ー新潟米を守り続ける仕事、確かにとても重要なお仕事ですね。朝妻さんが働く中でやりがいや魅力に感じていることを教えてください。

朝妻:行政職員として、県民の方々の不利益にならないよう、公平に仕事を進めることを常に意識しています。農業職という立場から、生産農家や農業関係の方々と接する機会や直接的な支援等が多いのですが、私たちの取組は、最終的には農業関係者以外の県民の方々にも、地域や生活の向上といった形で還元されなければならないと考えています。

自分たちのしたことが多くの人々に還元されているという実感が得られた際には、やりがいを感じることができますね。例えば、お米の品質が向上した、収穫量が増えたといった声を聞いた際や、販路拡大やマーケティングの取組に同行した際に、消費者の方々が喜んでくださったり、安価に手に入れられたことに感謝してくださったりする姿を見たときです。

もちろん、普段から農業関係者の方々から感謝の言葉をいただくことも、大きな励みになっていますが、私たちの仕事が、より広い範囲の人々に良い影響を与えていることを実感できたときに、この仕事のやりがいを強く感じます。

ー「県職員ならでは」だと思うような業務はありますか?

朝妻:現場では「栽培指導」として、現場生産者よりも少し高い視点でお話をすることもあります。これは特に上から目線といったことではなく、我々県の職員でなければ「指導」という立場を取ることができないからです。単なる情報共有や意見交換は可能ですが、少し言いづらいことでも、具体的な指導を行うことは県全体を見渡している我々県職員にしかできない役割ではないでしょうか。

農業政策や県全体の大方針を決定するような役割も、県でなければ担うことができません。現場を視察し、現状を踏まえて「こうあるべき」という方向性を定めることは、県にしかできない重要な役割です。もし誤った方向へ進んでしまえば、取り返しのつかない事態になりかねません。そのため、周囲の意見を幅広く取り入れながら慎重に決定していく必要があります。このような責任ある役割を担えるのは、まさに県の規模ならではだと思っています。

ー県の職員というと、窓口で接する機会も少なくあまり業務のイメージが湧かない方も多いかと思いますが、実際県庁で働いてみて気が付いたことなどはありますか?

朝妻:とにかくよく働くなと思いましたね(笑)私も元々のイメージでは、人数も規模も大きいし、ある程度業務は細かく割り振られており、1人当たりの業務量は少ないのかなと思っていましたが、全くそんなことはありませんでした。

もちろん常に残業をしているというわけではありませんが、業務のリズムや時期によっては残業することもありますし、大変なことも多いです。思っていたよりもずっと大変というのが率直な感想ですね。

また、職種にもよりますが、現場に赴くことも多々あります。外部の方と調整しつつ進めることや、イベントの企画をすることだってあります。公務員=デスクワークというイメージとはだいぶ異なる働き方だと思っています。

ー求職者の方にメッセージをお願いします!

朝妻:私は今新人のトレーナーという役割も担っているのですが、話を聞いていると学生時代に農業関係を専攻しており、専門知識を活かしたいという方が多いです。

そのように、何でもいいので活かしたい、やってみたいという思いを持って入ってきてもらえればと思っています。

採用後に必ずしもやりたいことができるとは限りませんが、自分のベースとして「これがやりたい!」というものを持っておくことは大切だと思っています。

大きな夢を描いて入庁して欲しいとまでは言いませんが、5年後、10年後自分の姿を何となくイメージしたり、自分が向かいたい方向性をある程度見据えて働いていた方が、仕事も楽しくなるのではないでしょうか!

ー本日はありがとうございました。

この記事は2024年10月3日にパブリックコネクトに掲載された記事です。

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