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助産師から保健師に!~より長く、お母さんと子どもを支えたい~

岩手県一関市で保健師として働く菊地さんのインタビュー記事です。

助産師として働いていた菊地さんが保健師を志したきっかけや、転職して感じたやりがいや魅力について伺いました。助産師と保健師、お母さんと赤ちゃんに関わるといった点では共通していますが、携わり方ややりがいの違いがよくわかる内容となっています。

―まずは簡単に自己紹介をお願いします。

菊地:私は一関市の出身で、市内の高校を卒業後、岩手県立大学に進学しました。大学では看護部を専攻し、看護師、保健師、助産師の免許を取得しました。

大学卒業後、県立病院で約10年働き、昨年度一関市役所に保健師として入庁しました。

―看護師、保健師、助産師の資格を持っているのですね!そもそも医療系の道に進まれたきっかけは何だったのでしょうか?

菊地:高校生の時に、夕方のニュースで「院内助産」の特集を見て、助産師さんに憧れたのがきっかけですね。赤ちゃんを取り上げるお手伝いがしたい、新しい命が誕生する瞬間に立ち会いたい、そんな思いで助産師を目指しました。

院内助産とは、通常分娩の際、医師の立会がなくても助産師が中心となり産婦さんのケアや出産の介助を行い、赤ちゃんを取りあげられるシステムのことです。

―では、前職では助産師として働かれていたのですか?

菊地:そのとおりです。ただ、県内で院内助産を行っている病院は限られていて、沿岸部の病院だけでした。私は最初、院内助産を行っていない県内中央部の病院を希望したため、主にハイリスクな分娩に関わることが多かったです。具体的には、早産や妊娠高血圧症候群、胎児機能不全などの妊産婦さんのケアや分娩に携わっていました。

その後、転勤希望を提出し、院内助産を行っている病院へ転勤となりました。妊産婦さんの不安を取り除き、リラックスした状態で出産に臨めるようサポートすることにやりがいを感じていました。自分がやりたかったことが実現できたのかなという印象ですね。

―助産師として活躍されていた中で、保健師に転職しようと思ったのにはどういったきっかけがあったのですか?

菊地:病院で出産をする場合、お母さんの入院期間は大体一週間くらいなのですが、助産師として勤めているうちに、お母さんが退院した後、自宅でどのように過ごしているのか、地域でどのように生活しているのかに興味を持つようになりました。入院中は、お母さんと赤ちゃんの健康状態ばかりに目が向いていましたが、退院後の生活、仕事や家事、育児の両立など、様々な悩みを抱えているお母さんたちもいるのではないかと考えるようになったんです。特にコロナ禍で、お母さんや赤ちゃんが自宅で孤立してしまうという話も聞いたことがあったので、入院期間中だけでなく、地域でもっと寄り添いたい、力になりたいという気持ちが強くなり、保健師に転職することを考えました。

―行政保健師としての業務については、元々知っていたのでしょうか?

菊地:実をいうと、転職を志したものの保健師としての業務は本当にざっくりとしかわかっていませんでした(笑)

地域住民の健康をサポートする、という漠然としたイメージですね。ただ、病院で働いていた時から、ケアが必要となりそうなお母さんについては、保健師さんと情報共有するなどして、連携して対応していましたので、退院後のフォローもしているんだろうなということは何となく知っていました。ただ、保健師として具体的にどのように関わっているのか、詳しいことまでは理解していませんでした。

ー地元であるという以外に、一関市役所を選択した理由はありますか?

菊地:やはり地元だからというのが大きな理由にはなります。自分が出産したときにも地元の保健師や助産師の方にとてもお世話になったので、今度は自分が地元でそういった支援をする立場になれればいいなと思っていました。

また、病院で働いていたということもあり、地元の病院のことは何となくわかっていたので、自分が行政に入ることで、行政と病院の懸け橋になれたらいいなという思いもあり、一関市役所を選びました。

―実際に保健師となり、現在はどういった業務を担当されているのですか?

菊地:私は現在母子保健を担当しているのですが、妊娠・出産・子育てに関する相談や支援、乳幼児健診、予防接種など、幅広い業務に携わっています。妊娠の届け出を受理するところから始まり、出生後については赤ちゃんもお母さんも様々な場面でサポートする機会があります。

赤ちゃん訪問といって、生まれたばかりの赤ちゃんのお宅に伺って、体重を測ったり、お母さんの体調を確認したりすることもあれば、お母さんの不安や悩みを聞くこともあります。子育ては本当に悩みが尽きないのかなと思いますので、子育て支援という形で、お子さんが育っていく過程での困りごとの相談に乗ることもあります。

―保健師の仕事をしていて、やりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?

菊地:妊婦さんの時からお子さんが大きくなるまで、長い期間にわたって関わり、成長を見守ることができるのは大きなやりがいです。病院では母子の入院期間は限られています。退院後は、1ヶ月健診などで会うことはあっても、その後の成長を見る機会はほとんどありません。保健師として、地域で子どもたちの成長を見守ることができるのは、嬉しいですね。また、離乳食教室などで、親御さんに寄り添って子どもの成長をサポートできた時も、やりがいを感じます。

―菊地さんは助産師としての経験をお持ちですが、助産師としての知識経験は活かせていますか?

菊地:私は存分に活かせていると思っています。母子保健の担当ということもあり、産後のお母さんの体調変化や赤ちゃんの成長過程など、正に病院で携わってきた部分でもあるので、そういったところは今の業務にも活かせていますね。

ただ、先程もお話ししたとおりで病院で触れ合える期間というのはほんの一時期でしかないので、退院後のケアなどについては先輩保健師の方々に聞きながら、少しずつ覚えていきました。

―地元で保健師として働くことについてはどう思われていますか?

菊地:同級生が子どもを連れて健診に来たりすることもあるので、懐かしい気持ちになることもあります。その時は、お互いの近況報告をしたりして、少しだけ昔話に花を咲かせたりすることもあり、地元で働く楽しさを実感することができます。

その反面、やはり地元であるが故に距離が近すぎて、業務として接するのが難しいと思えることもあります。ただ、そんな時は周囲に相談すると担当を代わってもらえるなど配慮してもらえるので、地元だから働きにくいと感じたことはありません。

―前職と比べてワークライフバランスは変わりましたか?

菊地:ワークライフバランスは変わりましたね。病院勤務時代は3交代勤務だったため、深夜勤や準夜勤があり、休日も不規則で子どもの行事に参加できないこともありました。

現在は基本的には土日祝日は休みなので、子どもと過ごす時間がすごく増えました。休みがとても取りやすくなったというのも大きいですね。

病院時代にも、子どもの急な病気などでお休みをすることができたのですが、自分が抜けてしまうことによる周囲への負担の大きさがわかっていたので、後ろ髪を引かれながら申し訳ない気持ちで休んでいるという感覚でした。現在は自分で業務を調整することも可能なため、ちゃんと申し送りをすれば周囲にも負担をかけることなく休むことができていると感じています。急な場合だけでなく、子どもの行事などでの休みもとても取りやすくなりました。仕事と休みを自分で調整できるようになり、心にもゆとりができたと思っています。

―菊地さんは今後保健師としてどのような方と一緒に働きたいですか?

菊地:相手の立場に立って、親身になって話を聞き、寄り添える方と一緒に働きたいです。保健師の仕事は、地域住民の方々と信頼関係を築くことが大切です。そのためには、コミュニケーション能力や共感する力、相手の話を聞いてそれを尊重するということが必要になると思います。

また、病院で看護師などの経験をしてから保健師になった方がいいのか、悩まれる方もいるかと思いますが、病院経験の有無はあまり気にする必要はないと思っています。

もちろん、病院での経験があればそれは保健師として確実に活かすことができます。ただ、学校卒業後そのまま保健師になれば、今度は保健師としてより多くの経験を積むことができると思いますので、保健師になるまでのことはあまり気にせず、やりたいことをやってもらえればと思っています。

―最後に、保健師を目指す方にメッセージをお願いします。

菊地:保健師としての業務は、外から見るとなかなかイメージがつきにくいかもしれませんが、様々な形で地域住民の健康を支え、地域社会に貢献できる、とてもやりがいのある仕事なので、是非保健師を目指してもらえたらと思います。

また、病院で勤務をしていると、ふとした瞬間に夜勤や不規則な勤務が辛いと思うことや、患者さんを別の立場で支えたいと思うこともあるかと思います。そんな時、一つの選択肢として保健師を考えてもらえると嬉しいですね。

―本日はありがとうございました。

この記事は2024年10月13日にパブリックコネクトに掲載された記事です。

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