奈良市役所で叶えるワークライフバランス ~元民間企業営業マンが語る転職のリアル~
大阪出身、民間企業で15年の営業経験を持つ藤野さん。コロナ禍をきっかけにワークライフバランスを見直し、奈良市役所への転職を決意しました。公務員未経験からの挑戦、現在の仕事内容、そして奈良市での暮らしの魅力について語っていただきました。
―ご経歴を教えて下さい。
藤野:大阪出身で、鞄メーカーの営業として15年ほど働いておりました。西日本のエリアを担当し、週末も働くなど毎日忙しく働いていましたが、当初は転職などは全く考えていなかったんです。
ただ、コロナ禍に入り会社が休みになることもあり、改めて自分の生活やワークライフバランスなどを見つめ直す時間ができました。結婚を機に奈良に移住して10年ほどですが、奈良の居心地の良さをすごく感じていて、じゃあ奈良に住んで大阪に通ってではなく、仕事も奈良でしていくということも良いのではと思うようになりました。
―それで転職を考えられたのですね?ではなぜ公務員だったのでしょうか?
藤野:もちろん営業職も考えていたのですが、せっかくキャリアを変える機会なので、180度違う仕事をしても面白いかなと思いまして。近隣に公務員の知り合いが多く、その方々に話を聞くうちに自治体で働くことに興味を持ちました。
そのタイミングでちょうど奈良市役所で社会人経験者採用をしていることも知り、チャレンジで応募しました。入庁は令和5年度です。
―興味を持たれたのはどの部分だったのですか?
藤野:まずはワークライフバランスの部分です。あとは、営業成績に追われる環境ではない点、コロナ禍もあったのでそういった社会情勢には左右されづらい仕事という点も魅力的だと感じました。
―受験に向けての準備はされたのですか?
藤野:公務員試験といえば、なにか専門的な内容が出るのではと予想していたのですが、奈良市の募集要項を見ると、社会人経験者採用では小論文試験となり、面接でも人物重視でこれまでの経験を選考していくという要素が強かったので、専門的な対策がそこまで必要ないと感じました。
―そうなんですね、では現在の仕事について教えて下さい。
藤野:本庁舎ではなく、東部出張所で振興係として働いています。奈良公園から東に自動車で30分ほど行くと山間地域となり、そこに出張所があります。
業務としては、その地域に足を運んでいただくためのイベント企画や、魅力発信、そして地域おこし協力隊の業務サポート、東部地域の広報誌の発行などです。
―窓口業務などの対応はされていないんですか?
藤野:私の所属する振興係は上記の仕事内容で、住民票の発行などの窓口業務は別の係が担当になりますが、対応する場合もあります。
―出張所はどのような体制なのですか?
藤野:地域おこし協力隊含めて15名くらいです。振興係は現在係長と私の2名です。実は昨年はもう1名在籍し3名体制でした。このため、1年目は先輩につきっきりに教えてもらえました。
―改めて、業務の詳細も教えていただけますか?
藤野:東部地域の魅力を発信して実際に足を運んでもらう「さとやま民泊」という事業や、季節ごとにイベントを企画し、開催をしています。
例えば、夏休み期間、子ども向けに自由研究としてできるような木工教室やブルーベリーの摘み取り体験、陶芸体験などです。東部地域ならではの資源を活かして人々を呼び込むようなイベントを開催しています。
あと、東部地域の農産物を市街地に出張して販売するマルシェも開催しています。
大阪や兵庫など県外の広い地域から来てもらうことが理想ではありますが、今は、奈良市の市街地やお隣の木津川市などから人々に知って来ていただくことが多いですね。とはいえ近隣の方にもまだまだ東部地域の魅力を伝えきれていないので、そういった方々にも気軽に足を運んでもらえるようになっていきたいですね。
―いきなりそうやってイベントを企画して実施するというのは前職の民間企業での営業職と大きくことなり大変ではなかったですか?
藤野:営業とは違いますが、前職でも売上をあげるための販促イベントなどの経験はあったので、意外とやりやすかったというか、すんなりと仕事には取り組めたと思います。
―その仕事がだいたい普段の業務の何割くらいを占めるのですか?
藤野:半分ほどです。残りは、先ほどいった地域おこし協力隊のサポートや地域向け広報の発行、あとは地域課題である鳥獣害対策や空き家対策なども、本庁舎で主管している業務も連携しながら取り組んでいます。
業務のジャンルとしては夏などの行楽シーズンは観光系の仕事が多く、それ意外の時期で地域課題への対応を行なっています。
本当に多岐にわたってるので、自分のなかで業務の優先順位はつけつつ、係長とも話し合って業務分担しながら取り組んでいます。
―民間との違いはなんですか?
藤野:民間時代はある程度決まった一定のお取引先との仕事になってきますが、今の職場だと地域住民の方、民間企業の方、関係部署、他の自治体など非常に多くの人が関わってくるという点は違いますね。
民間だと誰に利益を出してもらうために業務を行うかがわかりやすく決まっていますが、行政だといろんな関係先の間に入ってコミュニケーションをとって仕事をしなければいけません。この難しさはあると思います。
あと、民間だと1ヶ月や週単位での業務の対応対策が可能ですが、行政は年間の単位でのスケジュールになるものもあるので腰を据えて、協議をしながらすすめていくというスタイルも違います。
逆に共通している部分としては、自治体であっても自分の仕事を効率化したり質を上げていったり、アイデアベースで変えていけるという点があると思っています。マニュアルがもともとあってそれに沿ってやるというイメージを持っていましたが、実際に自治体で仕事をすると、自分で試行錯誤しながら工夫して進めていくことができています。
―入庁当初に大変だった部分はあったのですか?
藤野:まずはどの部署がどういう仕事をしているのかの把握が非常に大変でした。特に出張所では窓口で問い合わせに対応することも多いので、まずは広く浅くでも理解する必要がありました。
あとは業務の進め方では、民間だとスピード優先で進め、後で社内を説得することもありましたが、自治体だとまずは共有や相談が必要になってきます。その考え方の切り替えは必要でした。
1年やりきったことである程度全体を把握できたかと思います。何度でも質問しやすい環境でしたので、細かい場面ではどう進めるかなどを周囲の職員によく相談してました。
―10年以上の民間企業経験があるなかでの転職で、環境へ馴染んでいくことへの不安もあったのですか?
藤野:ありましたが、皆さん親身ですし職場には馴染みやすいのかなと思います。中途採用者も奈良市役所では増えてきています。年齢や経験によってなにか対応が変わるとかもないので入庁してからの違和感は無いですね。
―これまでの経験で今活きていると思うスキルはありますか?
藤野:人と関わることは非常に多いので、他者とコミュニケーションをとって仕事を進めていくスキルについては活かせています。庁内で助け合っていく環境でありますし、そのスキルさえあれば全く違う業種であってもお互いの良い点を伸ばしていけるのではと思います。
―お仕事のやりがいを教えて下さい。
藤野:働いてる場所が今住んでいる場所もありますので、自分の仕事が直接地域のために繋がる実感がもてるのは、自治体で働くやりがいだと思いますね。
自分が奈良市に住み奈良市で働けているということもあり、自分の仕事が自分や家族、周囲の方のためになるのは非常に強いやりがいです。
―働き方はいかがでしょうか?
藤野:ワークライフバランスを重視した職場ですので、残業も月10時間もない程度です。もちろん、通勤時間も減ったので家で過ごせる時間が増えました。休暇もとりやすくなりましたし周囲の職員にも私と同様に子どもがいる方もおり、こどもの急な発熱などの緊急対応にも理解がある職場です。ワークライフバランスは劇的に向上したと思います。
―奈良市の暮らしについてはいかがですか?
藤野:奈良市は、大阪へも近鉄電車ですぐで利便性が良く、奈良公園周辺のような観光地もありますし、東部地域のような自然豊かな地域もあります。良い意味で都会ではなくのどかな場所であり非常に満足しています。
率直に言って、思い切って飛び込んで、転職して良かったです。
―ありがとうございました!