建築からまちまで幅広く地域をデザイン~建築職としてまちを作る魅力とやりがい~
山梨県出身の深田さんは、組織設計事務所で国内外のプロジェクトを経験後、伊勢原市の建築職に転職しました。まちの変化を間近で感じたいという深田さんに、転職に至った思いや伊勢原市職員としての魅力、やりがいをお聞きしました。
ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。
深田:出身は山梨県の笛吹市ですが、東京の大学に進学し、そのまま東京で就職をしました。大学と大学院で建築学を学び、卒業後は組織設計事務所で約5年間、国内外の設計業務に携わりました。組織設計事務所とは、意匠設計、構造設計、設備設計など、建築に関する様々な専門家が集まっている比較的大きな設計事務所といったイメージですね。
2022年7月に伊勢原市役所に入庁し、現在は3年目になります。入庁後は主に市街地整備課で駅前の再開発を担当してきました。
ーどうして建築を学ぼうと思ったのでしょうか?
深田:小さい頃から絵を描いたり、ものづくりをするのが好きで、その延長を仕事にしたいと考えていました。高校に入った頃から建築の道は少し考えていたのですが、建築家が開いている模型展を見て、単なる作品ではなく、様々な背景を踏まえて意味のあるものづくりができる、建築の道に進みたいと思いました。
もともと物理や数学が好きだったことも、建築の道に進む後押しになったのかもしれませんね。
ー民間で働くという選択肢はありましたか?
深田:卒業してすぐに自治体で働こうとは思っていませんでした。学校で学んだことを活かし、技術を身につけるためには設計事務所で経験を積む必要があると思っていたからです。
また、もし自治体で働くのなら地元山梨県内かなと思っていたのですが、当時は地元に帰るというイメージが湧かなかったので、結果的に公務員は選択肢から外れ、前職の設計事務所に入ることにしました。
ー前職では国内外で活躍するなど、建築職としてやりがいもあったかと思いますが、何故転職しようと思ったのでしょうか。
深田:設計事務所で働いている時に結婚したのですが、妻が秦野市で働いていたこともあり、近隣でもある伊勢原市に住むことになりました。コロナの影響で主に在宅勤務だったのですが、コロナが明けてみると往復3時間の通勤が負担に感じるようになりました。
設計事務所では様々な地域でプロジェクトを担当していたのですが、地域の人との関わりが薄いことも悩みでした。地域に住みながら、地域の人々と関わり、まちの変化を間近で見ながら仕事をする方が、自分がやっている仕事にやりがいを感じられるのではないかと考えていました。
また、設計事務所でも再開発プロジェクトを担当していたのですが、まちづくりの指針となる都市計画から関わりたいという思いも強くなり、結果的に自治体に転職することを決めました。
伊勢原市に住んで2年ほど経ち、地元笛吹市に似た風景や、大山という象徴、歴史や文化を日々感じていました。更に伊勢原で出会った人たちの温かさもとても魅力的だったので、自治体の中でも伊勢原市役所で働きたいと思いました。
ー働きながらの転職活動だったかと思いますが、苦労したことはありますか?
深田:試験の準備は、思ったほど苦労はしませんでした。というのも、建築職の専門試験は、建築士の資格取得の問題と似ていたこともあり、比較的スムーズに進めることができたからです。一般教養に関しては対策本を買って勉強をしていたのですが、図形や空間把握の問題など、昔から得意だった分野の出題も多かったので、あまり迷わずに準備を進めることができました。
どちらかというと、設計事務所での仕事が切れ目なく続いていたため、転職のタイミングを見つけることが一番大変でしたね(笑)
ー現在はどういった業務をしているのでしょうか?
深田:現在は主に駅前の再開発を担当しています。地元の権利者を中心とした組織があり、市としてその組織が検討している計画に対する補助や、再開発で再整備されることとなる公共施設の整備案を作成しています。また、都市計画の案を作成することにも携わっています。
前職で培った知識や経験を活かせる場面も多いので、やりがいを感じていますね。
ーこれまでで印象に残っているような業務はありますか?
深田:印象に残っているのは、都市計画の案を作る業務ですね。都市計画案は、市で検討するだけでなく、市民の方々や再開発に協力していただいている設計事務所、県で指導をする部署などと一緒に進めていく必要があります。
前職でやっていた業務とも少し近いですが、都市計画法を読み解きながら案を作ることは、設計事務所ではやったことがなかったので、とても面白く感じています。建築の基礎は建築基準法ですが、都市計画を考える際には都市計画法が基礎となります。業務により参照する法律も異なってくるので、日々新しいことを学びながら進める必要があるというのはやりがいにも繋がりますよね。
ーずばり、深田さんにとっての自治体建築職の魅力を教えてください。
深田:まちづくりという大きなプロジェクトの中で、その前段階ともいえる方向性づくりに携われることが、市役所で働く魅力の一つではないでしょうか。
また、市役所では建築の設計や工事管理等を伴う営繕、都市計画など、建築職として幅広い業務に携わることもできます。
一つのまちに住み続け、そのまちの変化を間近で見ながら建築に携われることは、市役所の建築職ならではの大きな魅力です。住民の方々と顔の見える関係を築きながら仕事をすることで、より一層思い入れも深まるんじゃないかと思います。
ー自治体で働いてみて、前職とのギャップや入庁前のイメージとは異なっていたことはありますか?
深田:前職の設計事務所では、執務空間と来客受付の場所がはっきりと分かれていたのですが、市役所では同じ空間にあるため、業務中に窓口に来客があったらすぐに対応する必要があり、最初は戸惑いました。ただ、市役所ではあたりまえのことですよね(笑)
また、現在は都市部という部局に在籍しているのですが、建築職や土木職といった技術職だけで構成されているわけではなく、事務職の方もとても多いことに驚きました。事務職の方も含め専門的な知識を持っている人が多く、色々と刺激を受けています。
ーどういった方に自治体建築職で働くことをお勧めしますか?
深田:設計事務所で働いていると、業務を通じてまちづくり自体に関心を持つ人も多いと思いますが、市役所で働くことで都市計画から建築まで幅広く経験することができます。
特に、そのまちが好きな人であれば、市役所で働くことでまちの人と接しながら、自分が業務を通じて関わった街並みや建築物を使ってもらっている様子を直接見ることができます。
また、設計事務所にも様々な職種の人がいますが、市役所には建築職だけでなく、土木職や事務職、働く分野でも観光、農業、福祉など、様々な職員がいます。そんな人たちと関わりながら、まちの様々な側面を知り、より深くまちづくりに貢献することができます。
ー最後に、求職者の方にメッセージをお願いします!
深田:建築職の人数はあまり多くないのですが、その分建築職同士の絆は深いので、これからもぜひたくさんの方に入ってきてほしいと思っています。
特に都市計画の分野などは、建築を学んだ人が活躍できる場だと思っています!
—本日はありがとうございました。