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町全体で子どもの未来をつくる〜学びの交流拠点整備事業とは~

和歌山県高野町役場の独自事業「学びの交流拠点整備事業」に関して、高野町教育委員会の松谷さんにお話を伺いました。

—これまでのご経歴を教えてください

松谷:現在は、高野町教育委員会交流拠点推進室の係長をしています。高野山大学を卒業後、大阪のスポーツクラブに就職をし、約6年間勤めました。その後、高野町役場の社会人枠で平成21年に採用され、約10年間総務課、「学びの交流拠点事業」が始まるにあたり教育委員会へ異動した、という経緯です。

—最初の配属ではどのようなことをされていたのですか

松谷:総務課は業務範囲が広く、特に高野町役場の場合は他の市町村のように区分けがされてないので、それこそ猫を捕まえるところから、選挙の準備までやっていましたね。10年間おりましたが、担当は年ごとに変わりました。法務の傍ら他の業務を担当したり、管財室で公共施設の建物を管理していた年もあります。

—学びの交流拠点整備事業はどういったものなのですか

松谷:学校をはじめ、施設の老朽化が問題となっておりまして、それらを減らすという話がもともとありました。一方、教育環境にも力を入れて公共施設を統合していくという方針もあり、老朽化への対応を一番初めに着手することになりました。

そこから計画が進み高野町の小学校、中学校、こども園や給食センター、公民館を複合して1ヶ所に建てるという現在の形になりました。高野町内の文教施設が全て1ヶ所に集約される、というような事業です。

—これまでの事業展開をおしえてください

松谷:老朽化した施設を壊し、新しい施設を建てる、を繰り返して少しづつ進めています。令和2年に設計を開始し、令和3年に給食センターが建ち、令和4年にはこども園が出来上がりまして開園しています。公民館やプール、グラウンドも、令和6年の7月完成に向けて工事を進めています。

計画段階ではなるべく金額を抑えて、という話だったため、ここまで壮大になるとは思いませんでした。今となっては数十億円規模のプロジェクトとなっています。

どこの自治体も人口減少が課題で、各自治体、子育て世代を取り合っているのが現状です。その中で高野町でできることは、子育て、教育に力を入れていくことだと考えています。既に子育ての面では給食や医療費の無償化、修学旅行の補助等の施策は実施しているのですが、教育に関しては公立学校なので、なにか特色があるというわけではなかったんです。

特色ある教育を考えたときに、「小学校から中学校まで統一した教育」という話が生まれ、「であれば0歳から15歳まで統一した教育もできる」という話になり、さらにそこへ公民館を入れたらどうなるんだろう、もう0歳からおじいちゃんおばあちゃんまで・・・とどんどん話が膨らんでいきました。

公民館など、学校そのもの以外の施設が同じエリアに存在することで、住民と子どもの交流が生まれます。子どもは学校では学べない歴史や文化、住民の方が持ってる特技などを知ることができます。教員の働き方の改善が求められる中で、基礎学力の向上以外を求めることは難しくなっていくと考えていますので、その点も解決できますね。

また、子どもや教員へのメリットだけではなく、住民の方の生きがいにもつながります。ご自身のお子さんやお孫さんは高野山から出て行ったけれど、自分とつながりのある子どもがいるという安心感だったり、「あそこへ行くのが楽しみ」という場所づくりだったり。

「学校という概念を壊して、町全体で子供を育てる施設にしていく」という気持ちで進めています。

—町民の皆さんにはどのように事業の説明をしたのですか

松谷:計画段階で、住民の方とワークショップをしました。維持費のコストダウンも頭に置きつつ、どの辺りに力を入れたほうが良いかを話し合い、計画もどんどん変化していきました。行政から完成形を説明するというより、住民の方と一緒に進めてきました。

事業者の決定後にも、町民の方の意見を聞く機会を3回設けました。中学生と自分たちの教室がどんなふうになったらいいか、というワークショップを家具屋さんと一緒に実施し、実際に体育館の中で教室のモデルルームをつくって家具を配置したりもしています。学校の先生にも図面をお見せして配置を確認いただき、必要な備品などを確認していきました。

高野町は住民の方と距離が近く、ご意見が直に担当者に聞こえるので、こういった進め方ができたんだと思います。何万人規模の町ですと難しいかもしれませんね。このような進め方は住民の方の納得感や期待値が上がる一方、叶えられない要望もありますし、反対意見も出てくるのでそこを調整していくのが私の役割です。

今回の施設は、出来上がった時点がスタートで、出来上がったとこから変化していく施設だと考えています。カチッとしたものができるのではなくて、今後変化していく社会情勢や教育環境に合わせて柔軟に変化できる施設でありたいと、設計士の方とも話しているんです。

—業務の体制をおしえてください

松谷:交流拠点推進室長と私の2名ですが、事業は役場全体で取り組んでいます。

例えば、こども園に関しては介護福祉課、建物を建てるにあたっての検査や条例に関しては建設課、お金のことであれば財政課、土地のことは総務課が担当しており、推進室だけで進めている感覚は全くないです。

課を超えた業務ですが、職員は何かあれば助けてくれるという意識をもっているので進めやすいですね。町長と教育長の意向も聞きながら進めています。

—やりがいを感じますか

松谷:ずっと面白いと思って進めていますが、残りの施設のオープンも近づいてきて、最近はプレッシャーが非常に大きいですね。

プロジェクト自体を進めるプレッシャーだけでなく、高野町の子どもたちを今よりも良い環境で、これから変化していく社会に通用する人材にしていくという「子どもたちの未来を背負っている責任」も感じます。もちろん、僕だけが背負うわけではないですが。

ただ、その分やりがいはありますね。

—学びの交流拠点整備事業の展望をおしえてください

松谷:高野町の自然の中で育って世界中に飛び立ち、仕事で成功したり、人助けとか命を大事にする事業を起こしたり……そんな風になったらいいですね。

「大企業に勤めたら幸せ」という概念じゃなく、自分たちにとってどんな暮らしが幸せなのかを高野町で学んでもらって、それを実践してもらう子どもが増えたらよいと思います。

その際、町の高齢者の方が子育てに携わることができるようになれば、頼られるから元気でいないとね、という状態になっていくと思いますし、その点に興味をお持ちになった方が高野山に移住していただけたらよいとも考えています。

実は、個人的には、学校をいかにゲームやインターネットより面白くするか、という裏テーマもあります。私自身、とても中学生時代が楽しかったんです。学校へ勉強しにいくのではなくて遊びに行っているみたいな感覚でした。

家でゲームやインターネットをするよりも、学校にいるほうがずっと楽しい、って思っていただけるような環境を作りたいんです。ここにきたら学力が伸びるというより、なんか楽しい、という施設を作りたいと勝手に思ってるんですよ。

学校は1日のほとんどを身を置く場所なので、きつかったり、行くのがしんどい場所よりは、楽しかった、ついでに学習がついてくるような環境にしたいと・・・教育委員会なのに、そんなこと言うなって怒られそうですけど。

—高野町役場への応募を検討している方に一言いただけますでしょうか

松谷:学びの交流拠点整備事業もそうですが、高野町役場では一人ひとりの担当する仕事の規模が大きく、範囲が広いです。自分がやりたいと思ったり、課題と感じることを見つけたら、やりがいしかないと思います。ぜひご応募よろしくお願いします。

—本日はありがとうございました。

この記事は2023年12月27日にパブリックコネクトに掲載された記事です。

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