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住民の「やりたい」を育む場所にしたい〜奈良県三宅町の複合施設「MiiMo」の歩みとこれから〜

平成4年度に奈良県三宅町役場に入庁し、現在は政策推進課の課長として三宅町交流まちづくりセンター「MiiMo」を管理されている林田 忠男さんにMiiMoの概要や運営、今後の展望などを伺いました。

—はじめに、これまでの経歴を簡単にご紹介ください。

林田:大学を卒業後、平成4年度に入庁して1年目は教育委員会にいました。そこから1年で税務課を経て、小集落地区改良事業という出先のところに3・4年所属し、平成の大合併の際に合併協議会の事務局を担当。

その後は企画課、総務課、まちづくり推進課、長寿介護課と異動して今の政策推進課に至ります。

—林田さんがご担当されている三宅町交流まちづくりセンター「MiiMo」の概要についてお伺いします。

林田:Miimoは子どもから高齢者までを対象とした複合型施設「三宅町交流まちづくりセンター」として、令和3年度にオープンしました。

コンセプトはホームページにもあるとおり「子どもたちが、まちのみんなが、もっと三宅を好きになるために。三宅にあるものを活かし、三宅になかった新たな魅力を生み、三宅の未来を育む」という目標を実現するため、そして「MiiMoの5つの目的」のもと運営しています。

Miimoは3階建てで、1階は交流場所として全て吹き抜けになっています。入ってすぐにフリースペースと奥にMiiMoホールという200名までのイベントや講演会ができるホールがあり、手前には「まちキッチン」という料理教室をやっていただける部屋があります。

コワーキングカフェは、建設当時「コワーキングスペースを作っても利用者がいるのか」という議論もありましたが、現在は1日平均4名の利用があります。

2階は図書フロアになっていまして、中央公民館にあったスペースを大きくした感じになります。そして学童保育クラブが入っております。

3階は公民館のレンタルスペースとしての機能を持つコミュニティルームを3つと、MiiMoの事務所。そして「スマイル」という子育て世代包括支援センターのスペースがあります。2階と3階にある「テラス」と「子どもスカイガーデン」は、展望スペースになっています。

MiiMoを出たところの「MiiMo広場」は人工芝でできているのですが、建設前は「人工芝が良いのか、天然芝が良いのか」という話し合いもありました。天然芝は管理の問題があったのと、人工芝の場合雨が降ってもすぐ乾くので結果的に人工芝に決定して良かったと思います。

—林田さんがMiiMoの担当に就いたのはいつごろでしょうか?

林田:MiiMoの管理担当は令和4年からなので2年目です。ただ、その前のMiiMo建設時からのプロセスにはずっと関わっていて、令和3年は違う人間が運営に携わっていたのですが、4年度以降は私が担当しています。なのでトータルでは計画を立てる段階からずっと関わっています。

—MiiMoの運営体制は現在どのようなものになっていますか?

林田:正規職員が私(課長)以下4名。MiiMoの職員は事務が5名、図書スタッフが4名。そして地域おこし協力隊の方が2名いらっしゃいます。それとは別に運営委員会というのを住民主体で作っていまして、ルールの検討や企画の検討などを行っています。

—MiiMoオープンまでのプロセスはどのようなものでしたか?

林田:平成29年に複合施設を建てるという計画が持ち上がり、平成30年には基本計画を作り上げると同時に、有志の方を募ってプロジェクトメンバーを発足し、ワークショップなどを行いました。

平成31年(令和元年)には基本設計と実設計に入っていただくように建設側にお渡しし、同時に企画運営・支援の方をどのようにしていくかというのを業者と相談しまして。

そして令和2年度にはプロジェクトチーム等を組んで運営企画書を作り、ルール化をしていきました。

令和3年7月にプレオープン、12月にグランドオープンしました。

—MiiMoを建てることになったきっかけは?

林田:現在の森田町長が学童保育を中心に新たな複合施設を建てるということを公約に掲げていたので、計画が立てられました。その時たまたま役場前にある中央公民館というところがあり、その建物と学童保育の複合化を検討しました。

中央公民館は高齢者の利用が多かったので、学童保育の子どもたちと高齢者の交流を目的にし、そして幼稚園でも未就学児を対象にした子育て世代包括支援センターがあったので、そことも複合しようということになりました。

未就学児〜高齢者がひとつの複合施設に集うことによって交流が生まれるのではないかということで、平成29年に現在のイノベーション推進部生活推進課が発足。

まずは私の所属する政策推進課が複合施設にどのような施設を建てるかというのを住民から意見を募るところからスタートを切りました。

当初は私自身も計画を進めていくうちにイメージを掴んでいきました。ただ、住民の方からも反対の声が挙がったので、都度住民の方向けの説明会をさせていただきました。

—その後は住民の方や工事に携わる方の意見を聞きながら計画を進めていったのでしょうか?

林田:はい。基本構造を作るときも業者と一緒にそれぞれの施設を利用されている団体や管理している団体や職員にアンケートを取ったり、「新しい施設ができたらどのように利用したいですか」というのを直接聞きに回ったりというのを半年ほど行いました。

その後の計画のプロセスは先ほどお話したとおりで、その後はMiiMo自身が思い描いたように自走するまでを我々が伴走しているような形です。

「思い描いたように」というのは、行政が何かを作ったり企画していくのではなく、住民の方自ら活動していただけるような施設にしようというのがまず第一にあり、将来的にはMiiMoの運営を住民の方にお任せしたいというイメージを持っていたんです。

たとえば、MiiMoには広場側に「MiiMo食堂」というスペースがあるのですが、それも三宅町はあまり食べる場所やコーヒーを飲めるような場所がないという意見から始まった企画です。

これまでは行政が企画してお手伝いやお客様として住民の方に参加していただくという機会が多かったのですが、今後は住民の方が能動的にやりたい企画やイベントを行って、それが継続していくのが一番良い形なのではないかという思いがあります。

—実際にオープンしてからはどのような反応がありましたか?

林田:前身の中央公民館の頃は教育委員会が入ってましたので、教育委員会が企画している教室や町内の団体など継続して活動している利用者が多かったです。

その後運用などについてプロジェクトメンバーと話し合い見直しを図り、これまでは月1、2回程度しか活動していなかった団体も、毎週活動するようになりました。

コロナ禍もあったので大々的なPR活動はできませんでしたが、口コミで広まっていき町外から利用しに来られる方もいました。営利目的での利用者もいらっしゃいます。

子どもたちの方で言うと、毎週水曜日は学校が早く終わることもあって15時になったら子どもたちの遊び場になっていますね。MiiMoが建って3年になるので、オープン当時小学生だった子が中学生になって遊びに来て、ということもあります。

令和5年度からは子どもたち向けにMiiMoの窓口で駄菓子を販売したり、夏前からはアイスの自動販売機も設置しています。非常に好評です。

—MiiMoオープン後、印象に残っている企画などはありますか?

林田:平成30年度の企画運営を考えていたときに「子どもたちの意見も聞こうよ」ということで、小中学生が中心となって自分たちで運営する子ども会議というのを始めたんですね。美術の面は県立の芸短大の学生さんたちに入ってもらい、一緒に取り組んでもらいました。

一時コロナ禍で頓挫してしまうのですが、実際にMiiMoがオープンした令和3年度から再び子ども会議を行ったところ、「駄菓子屋をやりたい」「おばけ屋敷がやりたい」「お菓子作りをやりたい」という意見が挙がったので、その子どもたちの「やりたい」を応援するためにサポートしました。駄菓子屋は先ほどの窓口で販売しているものに残っていますね。

おばけ屋敷は「Mフェス」というMiiMo主催のフェスの際にやろうと思っていたのですが、コロナの関係でずっとできず。令和4年の10月に「諦めきれない」というのでおばけ屋敷だけやりました。

すると約120人もの子どもたちが集まって、大好評だったんです。その後令和5年のMフェスでおばけ屋敷をやった時には町外からも含め250人ほど集まりました。

お菓子作りはまちキッチンでMiiMo食堂の出展者の人に指導してもらいながらケーキ作りを行いました。

—MiiMoを運用・管理するうえでやりがいや面白みなどはありますか?

林田:内部的には日々一生懸命やっているだけなのですが(笑)。やはり施設での活動の幅の変化や子どもたちの自主性が育っていると感じたときでしょうか。30代以下の若手職員たちも積極的に意見を出してくれています。

あとは最近外部からの視察が増えていまして、今までとは違う三宅町になってきていると外部からも評価していただいているんだろうなと思っています。

—今後の展望などがあればお聞かせください。

林田:先ほども少しお話しましたが、MiiMoを作った当初から4・5年後には法人化して住民の方を中心とした法人格を作り、その法人に委ねていこうという想いがありました。

あまり行政側の我々が関わりすぎると「あれは良くない」「これはダメ」と言わざるを得ない立ち位置になりますので、もう少し自由にやっていただけるような体制にした方がより飛躍できるのではないかと考えています。

—本日はありがとうございました。

この記事は2024年3月22日にパブリックコネクトに掲載された記事です。
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