市民の心と身体の健康をフルサポート!保健師だからこそできる役割を模索する〜滋賀県湖南市・若手保健師の働き方〜
大学の看護学部を卒業し、滋賀県湖南市に保健師として入庁した杉原さん。看護師という選択肢もある中で保健師に就いた理由や実際の業務内容、保健師だからこそ得られるやりがいとはどんなものなのか、お話を伺いました。
ー入庁までのご経歴を教えてください。
杉原:地元は滋賀県内の別の市です。県内の大学の看護学部に進学したのですが、大学に入るまでは正直保健師が何をするかもよく知りませんでした。
このため、実際に仕事内容を知ったのは実習に行ってみてからです。3回生のときに看護師課程の実習、4回生のときに保健師課程の実習を行いました。看護実習が終わった後、一度は看護師としての就活も経験しています。大学卒業後、令和3年に保健師として湖南市役所に入庁し、健康政策課に配属されて4年目です。
ー看護師としても就活されたんですね。最終的に湖南市の保健師に決めた理由は何だったのでしょうか?
杉原:看護師は病院に来た人に対する医療や治療上のお世話がメインであることに対し、保健師は生活面に対していろいろな方向からアプローチできるという点が魅力でした。心身の健康や社会生活など、より幅広い分野で関わることができるのではないかと考えました。
また、働き方として夜勤等がないことも良い点だと思いました。
さらに、公衆衛生看護には「地域全体の健康を底上げしていく」という目的があります。実習の中で地域の健康教育、健康課題に合わせた計画の組み立てに携わり、対象者一人ひとりの今後の生活を意識した仕事に面白みを感じました。
実習先の別の市でも募集がありましたが、就活を始めたころにタイミングよく募集がかけられていた湖南市を選びました。コンパクトな湖南市なら市民との関係づくりがより密接にできるのではないか、と考えたことも理由の一つです。
ー次に、入庁後のお仕事についてお聞かせください。
杉原:成人保健分野としてがん検診や特定健診関連の業務をメインで担当しました。検査結果をうけて注意喚起の通知を送付したり、データ処理まで行います。
また、母子保健分野の仕事も兼務し、新生児訪問や各種検診の業務に携わりました。小学校区ごとに担当を持ち、新しく生まれたお子さんの家に行ってお母さんの話を聞き、身体計測などを行います。
湖南市では業務担当と地区担当の併用で仕事を行っています。業務の担当としては成人保健分野のがん検診や特定健診関連の業務をメインで担当しました。検査結果をうけて受診勧奨など様々な通知の送付、保健指導、データ処理まで行います。
また、地区の担当としては、新生児訪問や乳幼児健診など母子保健分野にも携わりました。小学校区ごとに担当を持ち、新しく生まれたお子さんの家に行って身体計測などを行い、お母さんの抱える悩みに対し助言を行います。
ー入庁一年目から現場対応にどんどん入っていく形だったのでしょうか?教育体制についてもお聞かせください。
杉原:プリセプターという指導係がつき、半年間ほど一緒に新生児訪問などを行っていました。他の職員の話を聞くと、数回プリセプターに帯同してもらい「次からはひとりで行ってね」という場合もあったようなので、私はかなり丁寧に教育していただいたのだと思います。
赤ちゃんを育てていく中で、お母さんはさまざまな悩みを抱えていますし、それに対する答え方も一人ひとり異なります。詳しく伝えすぎるのも気にしすぎて良くない場合もあります。
先輩職員は、そういった対応の仕方がとても丁寧でした。指導してもらう立場の私としてもたくさんのことを学べましたね。
ー割合としては、どのお仕事が最も多かったですか?
杉原:やはり、母子保健分野が多かったです。新生児訪問は件数も多く、お母さんと必要なお話をしていると1時間ぐらいは要しますし移動時間もあります。訪問をしていると日中の時間帯はすぐに過ぎてしまい、残りの仕事は残業で対応することも多かったです。
1年目は初めてのことばかりで慣れていないこともあり、一つひとつの業務に時間がかかりました。担当していたがん検診、特定健診も年に1回のことなので、一連の流れを把握できるようになったのは2年目からでしたね。
ー次に、現在のお仕事についても詳しくお聞かせください。
杉原:健康政策課は国保、健康推進、健康企画という3つの係に分かれており、今年は全ての係を兼務で仕事をしています。国保では特定健診の一部分を担当、健康推進では新たに始まった胃カメラによる胃がん検診に携わっています。そして健康企画では、主幹級の事務の職員が立ち上げた健康づくり習慣化モデル事業という新規事業に係員の一人として参加しているところです。
今年は新規事業やモデル事業の推進、集団による特定健(検)診の業者を変更するなど今まで通りではないことが多く、なかなか大変でね。また、こども家庭庁が設立された関係で子どもに関する部署も新設され、母子保健分野の業務はそちらに移動したんです。なので、1年目とは打って変わって成人のケースを持つことが増え、事務仕事の比重も大きくなりました。
成人対応では、これまでの生活からさまざまな問題が積み重なっておられる方もいらっしゃいます。複雑な案件に対応するためには幅広い知識が求められますから、これまでより仕事の難易度は上がりました。
ー新しいプロジェクトはだれが発案して始まるのでしょうか?
杉原:胃カメラをはじめ、必要事業として国から下りてくるものもあります。一方で、たとえば健康企画係として「市民の健康を守っていくためには何をすべきか?」という目的意識を持ち、職員を中心に始める事業もあります。
私自身は新規事業の発案をしたことはありませんが、事業運営に携わりながら新しいことにチャレンジしていく姿勢を学んでいます。
ー保健師として働く中で感じるやりがいについてお聞かせください。
杉原:国保の特定健診は、たとえば「〇%の方が健診を受けて〇%の人は数値が悪く、そのうち〇%の人はアプローチをしたらこれくらい改善した」という形で評価指標が非常にはっきり明示される分野です。数字でもってしっかりと評価が見える部分を、私は面白く感じます。
市民の健康に関する計画に沿って業務を行う中で、「自分がこの仕事をしたことで、この結果に繋がった」ということが明確にわかると嬉しいですし、良い結果にならなかった場合も「次はどういうふうに改善したらいいか」が考えやすい。より良い方法を模索しながら、市民の健康を守り続けていくことにやりがいを感じます。
ー職場の雰囲気はいかがでしょうか?
杉原:風通しはとても良いです。先輩職員に質問をすると、自分の時間を割いてでも丁寧に答えてくださいますし、仕事の中で迷いがあるときも快く協力してくださるのでありがたいです。特に気負うことなく相談もしやすい環境ですよ。
ーこれからの展望についてお聞かせください。
杉原:まだまだ目の前の仕事に手一杯で将来のことを考える余裕がないのですが、毎日健康に長く過ごしていきたいです。ライフイベントが訪れた際は、働き方も柔軟に変えていけたら良いなと思っています。
ー現在の働き方については、やはり大変だと思う場面もありますか?
杉原:特に秋は集団健診の時期ということもあり繁忙期にあたります。予約を取ったり健診結果の処理をしたり、場合によっては市民の相談業務も並行して行うので、その時期はどうしても残業が多いですね。健診まわりの作業をより効率的に行っていけるよう、業務改善についても考えていきたいです。
ー最後に、湖南市の保健師として働くことの魅力やメリットなどをお聞かせください。
杉原:休暇や手当といった福利厚生の手厚さは、公務員として働くことのメリットだと思います。また、たとえば湖南市よりも大きい自治体ですと細分化された業務のほんの一部分だけを担当したり、反対に小さな自治体では業務は幅が広すぎて大変、ということもあるかもしれません。
先ほどお話ししたように、湖南市は人口約5万人のコンパクトな町。ちょうど真ん中ぐらいの規模の自治体の中で、一つずつの業務を丁寧に取り組めるし全体を見ながら動くこともしやすい。良いバランスをとりながら働くことができることは大きな魅力ですね。
ー本日はありがとうございました。